福岡県保健環境研究所
Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences
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    感染症  /  ウイルス感染症

           ジカウイルス感染症

1 ジカウイルス感染症とは
 ジカウイルス感染症は、デング熱やチクングニア熱と同様に、蚊が媒介する感染症です。原因ウイルスは、フラビウイルス属ジカウイルスです。ジカウイルスは、1947年にウガンダにあるジカ森のアカゲザルから初めて分離されました。ジカウイルスに感染すると、軽度の発熱、発疹、結膜炎などの症状が現れますが、重症化することは稀と言われています。
 日本では、2016年2月5日に、感染症法※における4類感染症及び検疫法における検疫感染症に追加され、同年2月15日に施行されました。(※感染症法は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」を指します。)
 ジカウイルス感染症が感染症法の対象疾病に追加されたことにより、医師による保健所への届出が義務となりました。また、検疫法の対象疾病に追加されたことにより、検疫所での診察・検査、汚染場所の消毒等の措置が可能になりました。
 なお、ジカウイルス感染症は、通称「ジカ熱」と呼ばれていましたが、感染症法における届出疾病名が「ジカウイルス感染症」に指定されたため、本更新から「ジカウイルス感染症」と記載します。

2 発生状況
 海外では、アフリカ(主に中央部)、東南・南アジア、オセアニア/太平洋州で報告され、最近では、ブラジル、コロンビア、エクアドルなど中南米を中心に多数報告されています。
 日本では、海外で感染し、帰国後に発症する症例が、2013年以降3例報告されています。国内で感染し発症した例は報告されていません(2016年2月16日現在)。

 なお、ポリネシア、ブラジル、エルサルバドルにおいて、ジカの流行時に、ギラン・バレー症候群の症例数が増加したことから、ジカウイルス感染症とギラン・バレー症候群との関連性が疑われています。また、ブラジルにおいて、妊娠中のジカウイルス感染による胎児の小頭症との関連が疑われています。これらの状況を受け、国立感染症研究所が、流行国地域への渡航及び国内でのジカウイルス感染症の流行に関するリスクアセスメントを行った結果、「詳細な調査結果が得られるまで妊婦の流行国地域への渡航は可能な限り控えた方が良いこと」と発表されました。

3 感染経路
 ウイルスを保有するネッタイシマカとヒトスジシマカといった蚊に吸血されることで、ヒトへと感染します。ジカウイルス感染症を媒介するネッタイシマカは現在国内には生息していませんが、ヒトスジシマカは日本のほとんどの地域(秋田県及び岩手県以南)に生息しています。稀な感染経路としては、献血や性交渉による感染も指摘されています。また、妊娠中の女性が感染すると胎児に感染する可能性が指摘されていますが、感染機序や感染時期は現在のところわかっていません。

4 症状について
 ジカウイルスに感染すると、2〜12日(多くは2〜7日)の潜伏期間の後、発熱(38.5度以下)、頭痛、眼球結膜充血、皮疹、筋肉痛、関節痛などの症状が2〜7日間続きます。これらの症状は、デング熱に似ていますが、一般にデング熱よりも軽症です。また、不顕性感染(感染しても症状が現れない感染)も報告されています。
 また、ジカウイルスに感染した母親から胎児へ感染を起こすことがあり、小頭症などの先天性障害を起こす可能性があるとされています。

5 ワクチン及び治療法について
 ジカウイルスに対するワクチンや治療薬は現在のところありません。患者の症状に応じて、症状を軽くするための対症療法を行うこととなります。

6 予防について
 感染が報告されている地域へ渡航する方は、虫よけスプレーを用いることや長袖の衣類を着用するなど、蚊に刺されないようにすることが重要です。

7 参考文献

(2016年2月17日更新)

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