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種の解説

保全対策

陸水域は現在もっとも危機的状況にある生物の生息環境の一つであり,両生類のほか,淡水魚類・水生昆虫などの衰退の大きな原因となっている。日本はウエットランドと呼ばれ,ことに水田域の大小の水路網は多様な動植物を育んできた。ところが,前述のように稲の生育期にも水田の水量が少なくなり,中干しが多くなった傾向があるが,少なくとも年間を通じて水路に十分な水が供給されれば,水田域の両生類を含む多様な生物相が大幅に回復することが期待できる。また,放棄水田を湿地として一種の淡水ビオトープとして活用したり,山際の水田に冬期湛水を試みることにより,アカガエル類やサンショウウオ類など,冬期産卵の種に好適な産卵場所を提供することが可能となる。

県下には林や草地に接して浅い池のある公園・緑地・ビオトープなどがいくつかあり,その多くは両生類の産卵場所として利用されている。九大伊都キャンパスの生物多様性保全ゾーン,最近造成された北九州市若松区の響灘ビオトープ,福津市の手光ビオトープ(中島ほか,2012)などはその好例である。県立公園などに湿地環境を造成することは,水生生物の保全のみならず,理科教育や環境教育の場としても活用できる。

最近の開発に伴う土木工事は,自然環境や生態系に配慮することになっている。ダム建設では山間部の水田域,渓流域が消失することになるから,そこに生息する両生類は生息場所や産卵場所を失い,やがて消滅するほかない。環境変化の影響を緩和する,いわゆるミチゲーションの手段として,少なくともその周辺に代替環境を整備する必要があるが,その方法は動物群ごとに多少とも異なるから慎重な検討が必要である。

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