保環研ニュース 第48号 2003.6 

大牟田川底ボーリング調査 大牟田川川底ボーリング調査(後期調査)

平成15年5月に県で実施した調査です。
(写真は試料採取の状況です)
現在、当研究所で試料の分析を行っています。

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  保環研ニュースバックナンバー  

報  告

ISO14001更新審査について

 当所では、環境への負荷を低減するため、計画(Plan)−実行(Do)−点検(Check)−是正(Action)〔PDCAサイクル〕による継続的な環境改善のシステムを作り、平成11年10月から運用を開始しました。これが、国際規格(ISO14001)の規格要求事項に適合していると認められ、環境マネジメントシステム審査登録制度に基づき、平成12年3月に福岡県の機関としては初めて認証を取得しました。その結果、電気の使用量、可燃物及び産業廃棄物の排出量は、運用開始時に比べ、大幅に削減されたところです。

 認証取得から3年経過し、平成15年2月25日〜26日ISO14001更新審査を受け、初期の目的は殆ど達成済みで、順調に継続的改善が果たされているものと評価されました。

 今後は、これまでの「紙、ゴミ、電気」(エコオフィス)を中心としたISO活動から、「環境研究の推進」、「県民への環境情報発信」、「環境教育の推進」などを主体とした活動へ移行していくことが必要と考えています。

(研究企画課)

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報  告

第1回外部評価委員会について

 平成14年度から学識経験者で構成される外部評価委員会を設置し、幅広い視点から保健環境研究所の試験研究などについて評価をしていただくことにしました。その第1回外部評価委員会を平成15年2月10日、当研究所において開催しました。

 当日は、保健環境研究所の概要、試験研究業務等について説明をした後、施設見学を行いました。各評価委員からいただいた貴重な意見や助言を含む評価結果は、今後、所の運営に反映させていきたいと考えています。

(研究企画課)

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最近の話題

重症急性呼吸器症候群(SARS)について
  −ウイルスとその検出法を中心に−

1.概要

表1 SARSとすべき症候群の考え方(症例定義)
1.疑い例
  38℃以上の急な発熱と咳、呼吸困難などの呼吸器症状 
  発病前10日以内に、SARSの伝播確認地域へ旅行
  もしくは居住、あるいはSARS患者との密接な接触
2.可能性例
  疑い例に加えて次の内どれかに当てはまる者
  ・胸部レントゲンでの肺炎所見を示す者
  ・病理解剖による呼吸窮迫症候群の所見を示す者
  ・SARSコロナウイルス検査で陽性の者 
(WHOによるSARSの臨床病像に関する暫定情報を要約)
*伝播確認地域中国(北京、広東、河北、香港、湖北、
内蒙古、吉林、江蘇、山西、陜西、天津、台北)、
カナダ(トロント)
(6月9日現在)

 重症急性呼吸器症候群(SARS,Severe Acute Respiratory Syndromeの頭文字)は、世界二十数カ国で広がりをみせている呼吸器疾患で、表1に示した様に、38℃以上の急な発熱、咳、呼吸困難等の呼吸器症状を示します。

 これまでに世界で、8,421名の疑わしい患者と784名の死亡者が報告されています(6月9日現在 WHO)。患者は比較的高年齢に多く、こどもの患者は少ないことがわかっています。発病患者の致死率は約14%とされていますが、高齢者程高く65歳以上では50%以上にものぼっています。

 SARSは飛沫感染により伝播すると考えられ、症状の出ている患者との濃厚な接触、すなわち咳などによる飛沫を直接浴びるような接触により感染すると考えられています。潜伏期間は2〜7日と考えられており、感染の疑いがある場合は10日間程度健康に注意し、異常があった場合には保健所まで電話でご相談ください。

2.SARSコロナウイルス

図1
図1 コロナウイルスの構造

 SARSに関しては世界各国の研究機関が協力し、発生から極めて迅速に病原体の特定が行われ、SARSコロナウイルスが原因であることがわかりました。コロナウイルスは電子顕微鏡で見た場合に表面に太陽のコロナに似た突起が見えるため命名されました(図1)。インフルエンザウイルス等と同じRNAウイルスに属しますが、RNAウイルスの中では最も大きな遺伝子を持つウイルスです。

 これまで人では軽いかぜ(Common cold)の原因ウイルスとして知られていましたが、動物では呼吸器系、消化器系、脳神経系など様々な疾病を引き起こすことがわかっています。現在流行しているSARSコロナウイルスはこれまで知られていたコロナウイルスとは異なる新種のウイルスであることが明らかになっています。

3.ウイルス検査

表2 SARSコロナウイルス検査
PCR検査 迅速、特異性が高い。
検出感度に問題がある。
ウイルス分離 検査に時間がかかる。
P3レベルの実験室が必要。
血清検査 ペア血清(急性期と回復期)が必要。
2週間以上間を開けて採血する。

 SARSコロナウイルスの検査法を表2に示しました。当研究所ではPCR検査とウイルス分離を行う予定です。SARSコロナウイルスに関する研究は急速に進展しており、今後も新たな検査法が開発されるものと思われます。また、現在の手法ではSARSコロナウイルスが全て検出できるとは限らないため、診断の際は症状や疫学的な情報と組み合わせて総合的に判断することになっています。病原体の検出により典型的なSARSの症状(重症の肺炎等)の他に軽いかぜ様の症状(非典型例)やほとんど症状の現れない例(無症状例)もあることが判ってきました。

 治療法は対症療法が中心で確立されたものはありませんが、病原体が特定されたことから今後抗ウイルス薬などの研究が進むものと考えられています。また、海外の報告によると、SARSと診断された患者さんでも80〜90%の方は自然治癒しています。

4.SARS対策

 福岡県では「福岡県重症急性呼吸器症候群に関する行動計画」(平成15年4月30日)を策定し県民のみなさんの相談や患者の発生に対応しています。

 SARS予防法はマスクや手洗いといった一般的な感染症対策が推奨されていますが、道路ですれ違ったり、後日同じ場所を訪問した程度の接触では感染の可能性はほとんどないと思われます。消毒法は加熱やエタノール、次亜塩素酸ナトリウム等による消毒が推奨されています。家庭では加熱できるものは煮沸消毒し、その他は塩素系の漂白剤(次亜塩素酸ナトリウムを主成分とするもの)を100倍程度に薄めて使用すると良いでしょう。

 SARSに関する情報は福岡県、厚生労働省、国立感染症研究所のホームページ等で入手することができます。

福岡県〔重症急性呼吸器症候群(SARS)に関する情報〕リンク切れ
厚生労働省ホームページ
国立感染症研究所〔重症急性呼吸器症候群(SARS) に関する情報〕

(ウイルス課 梶原 淳睦)

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最近の話題

黄砂について

 春の風物詩として「黄砂」があります。

黄砂の電子顕微鏡写真
黄砂の電子顕微鏡写真
大気中の浮遊粉じん
2002年3月、4月に採取した大気中の浮遊粉じん
上段左から2番目:3月21日〜22日に採取
黄砂の多い日は粉じんが黄色い色をしている

 春先の晴れた日に景色が黄色っぽくかすんで見えることがあります。これは中国大陸から飛んできた細かな黄色い砂が引き起こす大気現象です。中国北東部の黄土高原、ゴビ砂漠、タクラマカン砂漠等の細かい砂が、春の低気圧によって上空に巻き上げられ、偏西風によって東へ運ばれ韓国、日本に飛来します。ときには太平洋を超えて北米大陸にまで到達することもあります。黄砂は砂が乾燥し、風が強くなるといった条件が整う3月から5月が本格的なシーズンですが、昨年(2002年)11月のように季節はずれのときに観測されることもあります。

 黄砂は自然現象で、昔からあるものです。中国の黄土高原は、新生代の第4紀(およそ200万年前から現代まで)に、西方の砂漠地帯の土砂(黄土)が偏西風に乗って運ばれ、それが数十mから数百m積もって形成されたといわれています。

 今年(2003年)は黄砂は余り観測されておらず、「最近では例外的に黄砂の少ない年になるだろう」(気象庁予測)といわれています。これは今年3月に中国北部に降り続いた雪の影響とみられています。今年は少なめな黄砂ですが、近年観測されることが非常に増えています。

 記録によると、17世紀の内モンゴルでは砂嵐の発生は年間0.3回から1.0回であったのに対して、1990年代は年間3.0回から5.0回に増加しているそうです。 福岡では、1991〜1999年の年間黄砂観測日数は6.8日であったのに対して、2000〜2002年は25.0日と大幅に増加しています。さらに、2000年以降は、黄砂現象が大規模化しているように見受けられます。昨年(2002年)3月20日から22日にかけて飛来し、福岡でも観測された黄砂は非常に大規模なものでした。最悪時には視程が数Kmまで低下し、空の便の運行に大きな影響を与えました。この時は、福岡県内においてもSPM(浮遊粒子状物質)濃度が増加し、環境基準を上回る観測点もありましたが、発生源により近い、韓国や中国では激しい黄砂に見舞われています。中国では今年から黄砂指標の利用を始めるそうで、新たな指標では、黄砂は「浮塵」、「揚沙」、「沙塵暴」、「強沙塵暴」の4種類に分類されるそうです。韓国では、黄砂は眼、呼吸器へ悪影響を及ぼすととらえられており、SPM濃度に応じて警報を出すようになっています。

 このような、近年の黄砂現象の頻度や規模が増加している背景としては、大陸内陸部の過度の放牧や耕作地の拡大による砂漠化の進行、内陸部における気温及び地温の上昇、土壌水分量の低下、気圧配置の変化等の複合的な要因が考えられます。

 黄砂は、移動する途中で、中国沿岸部において発生した硫黄酸化物やスス等の大気汚染物質と一緒になり、運ばれてくることがあります。このように、黄砂には他の汚染物質と共に飛来して、健康影響が疑われるといった悪い面があります。一方、黄砂にはアルカリ成分が多く含まれており酸性雨の影響を弱めたり、リン、カルシウム、鉄等の栄養分が含まれているため海洋への栄養供給源になる、といった良い面もあります。

 このように黄砂についてはいろいろと調べられていますが、まだまだ不明な点が多くあります。国は、日中韓モンゴル4ヶ国及び国際機関の共同による事業を開始しております。福岡県も平成14年度から全国的な黄砂実態解明調査に参加しています。

(大気課 田上 四郎)

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用語解説 

自然再生推進法

 「自然と共生する社会」の実現に向けて、「21世紀『環の国』づくり会議」や「新生物多様性国家戦略」等において、自然の再生が主要な課題として位置づけられています。この自然の再生を、総合的に推進し、生物多様性の確保をとおして自然と共生する社会の実現を図るとともに地球環境の保全に寄与することを目的とした「自然再生推進法」(主務大臣:環境大臣、農林水産大臣及び国土交通大臣)が、平成15年1月1日より施行されました。そして、自然再生に関する施策を総合的に推進するための基本方針「自然再生基本方針」(環境大臣が、農林水産大臣及び国土交通大臣と協議して案を作成、閣議決定。概ね5年ごとに見直し)が平成15年4月1日に決定され、これを受けて自然再生推進法の本格的な運用が開始されました。

 この法律では、自然再生を、過去に損なわれた自然環境を取り戻すため、関係行政機関、関係地方公共団体、地域住民、NPO、専門家等の地域の多様な主体が参加して、自然環境(河川、湿原、干潟、藻場、里山、里地、森林、サンゴ礁など)の保全、再生、創出、又は維持管理することと定義しています。そして、この自然再生を目的として実施される事業が「自然再生事業」とされており、地域における自然環境の特性、自然の復元力及び生態系の微妙な均衡を考慮し、科学的知見に基づいて事業を実施します。更に、事業の着手後も自然再生の状況をモニタリングし、その結果を科学的に評価し、事業にフィードバックすることとされています。

 国や地方公共団体の計画によるのではなく、地域の多様な主体の発意と参加、連携による事業の実施(自然再生協議会を組織して行う)、事業の科学的知見に基づく実施、事業の順応的、段階的な推進及び自然環境学習の推進等がこの法律の主な特徴となっています。また、総合的、効果的かつ効率的な自然再生の推進をバックアップするため、政府は、環境省、農林水産省、国土交通省、関係行政機関で構成する自然再生推進会議を、環境省、農林水産省、国土交通省は自然環境に関し専門的知識を有する者からなる自然再生専門家会議を設けることとなっています。

(環境生物課 山崎 正敏 )

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連  載

福岡県の川の生き物−水辺の観察ガイド−(17)

ヨコエビ
ヨコエビ

ヨコエビ科

 名前のとおり横向きになって移動する体長10mm前後の小型の甲殻類で、きれいな川の落ち葉の下などでよく見つかります。体の色は赤褐色から暗褐色まで様々な個体が見られ、主に落ち葉などを食べています。

 福岡県の河川淡水域で普通に見つかるのは、ヨコエビ科のヨコエビ(ニッポンヨコエビ)1種で、他の生き物との区別は容易ですが、河口近くにはニホンドロソコエビなどヨコエビ目(端脚目)のヨコエビ科以外の種類も多数生息しています。

 また、陸上の落ち葉の下などには、ヨコエビによく似たハマトビムシの仲間も生息しており、水辺教室などでも時々バットの中に入っているのが見つかります。ハマトビムシは陸上にいるために河川の水質とは直接の関連はなく、生物による河川水質評価においては間違えないように注意が必要ですが、横にならずに立った状態で移動することから区別可能です。

(環境生物課 緒方 健)

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発行日 平成15年6月

編集発行 福岡県保健環境研究所 研究企画課

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