感染症/細菌感染症

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レジオネラ症

レジオネラ症とは

 レジオネラ症はレジオネラ属菌による細菌感染症です。肺炎を主徴とするレジオネラ肺炎(pneumonia type)と肺炎が見られないポンティアック熱(pontiac fever type)があります。

レジオネラ肺炎

 軽い咳、微熱程度のものから意識障害を伴う劇症肺炎まで症状は様々です。潜伏期間は2〜10日で、発熱、全身倦怠感、筋肉痛、食欲不振などの非特異的症状から始まり、次第に咳嗽、喀痰、胸痛などの呼吸器症状がでます。また、しばしば頭痛、傾眠、昏睡、脳炎などの精神神経症状が見られます。

ポンティアック熱

 潜伏期間は数時間から48時間と短く、全身倦怠感、筋肉痛、発熱、頭痛などのインフルエンザ様症状とともに乾性咳嗽、めまい、嘔吐などの症状が見られます。通常は対症療法により一週間以内で軽快します。

レジオネラ属菌

 細胞内寄生性を示すグラム陰性の桿菌です。1976年にフィラデルフィアのホテルのクーリングタワーを感染源として約220人がレジオネラ肺炎を発症し、34名が死亡する集団発生がありました。その事例の患者の肺組織から起因菌が分離され、 在郷軍人会(The Legion)参加者を中心に患者が発生したことから“Legionella”、肺を好むという意味から“pneumophila”と命名されました。レジオネラ属には60種類が知られていますが、この中でもレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)血清群1による感染症が最も多く報告されています。レジオネラ属菌は自然界の水系・土壌に広く分布しており、環境中のアメーバと共生しています。感染源としては、クーリングタワー、噴水、給湯施設、循環式浴場などの水系施設が原因となることが多く、レジオネラで汚染されたエアロゾルを吸入することにより発症します。

浴場水のレジオネラ検査方法

 当所では日本工業規格の工業用水・工場排水中のレジオネラ試験方法(JIS K 0350-50-10)に準拠して浴場水中のレジオネラ属菌の検査を行っています。 浴場水1Lをメンブランフィルターでろ過し、酸処理を行った後、分離培地(レジオネラGVPC選択寒天培地)に塗抹し7日間培養します。 レジオネラ属菌のコロニーは、乳白色大小不同で、目視で確認できるまでに4から7日かかります。 レジオネラ属菌と考えられるコロニー(推定レジオネラ)をレジオネラBCYE-α寒天培地(以下BCYE-α寒天培地)および血液寒天培地に塗抹し、2日間培養後、BCYE-α寒天培地だけに発育したコロニーを確定レジオネラとして菌数を計測します。 その後、血清型別試験、PCRおよびハイブリダイゼーション等によるレジオネラ属菌の菌種の同定を行います。

レジオネラGVPC寒天培地上のレジオネラ・ニューモフィラ

レジオネラGVPC寒天培地上のレジオネラ・ニューモフィラ

レジオネラ症を予防するためには

 レジオネラ症の発生を予防するためにはレジオネラ属菌が繁殖しやすい状況をできるだけなくし、菌を含むエアロゾルの飛散を抑制することが重要です。詳しくは厚生労働省のレジオネラ対策をご覧ください。


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