感染症/細菌感染症

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腸管出血性大腸菌感染症

腸管出血性大腸菌とは

 腸管出血性大腸菌は大腸菌の一種です。大腸菌の中には、人に対して病気を起こすものがありますが、その中でも腸管出血性大腸菌はベロ毒素という毒素を作ることによって人に健康被害を起こします。

感染源

 主に加熱不足の肉、生野菜などの食品、水を介して感染します。また、感染者の便を直接あるいは間接的に口にすることによる感染、腸管出血性大腸菌を持っている動物との接触によって感染することがあります。集団事例になることもあり、これまでに生肉、生野菜を介した大規模な食中毒事例や、高齢者福祉施設や保育所など集団生活を送る場所での食中毒や感染症事例が報告されております。

症状

 主な症状は激しい腹痛、水様性の下痢、血便です。無症状の場合もありますが、感染者の数パーセントが溶血性尿毒症症候群(HUS)などの合併症を起こし、生命に関わることがあります。特に、抵抗力の弱い高齢者や小児は注意が必要です。

感染者数

 毎年全国では約3000人〜4000人が報告されており、福岡県では約100〜300人が報告されています。1年を通じて感染者の報告がありますが、最も多い時期は気温の高い夏場です。

感染を防ぐには

  1. 肉を焼く箸(トング等)と食べる箸を分ける
  2. 肉は十分に加熱する(75℃、1分以上)
  3. 野菜はよく洗ってから調理する
  4. 生食用以外の肉を生で食べない
  5. 動物を触った後はよく手を洗う

保健環境研究所での検査

 腸管出血性大腸菌については、市販食品のモニタリング検査(食品収去検査および食中毒菌汚染実態調査)、食中毒(疑い)検査、感染症細菌検査などの項目で、本菌の検出や原因究明検査を実施しています。 特に感染症細菌検査においては、当所に搬入された腸管出血性大腸菌の菌株について分子疫学的解析( PFGE解析IS-printing解析 )等の検査を行うことにより、県内で流行している腸管出血性大腸菌の感染源の調査や集団事例の拡大防止に努めています。

福岡県で検出されている腸管出血性大腸菌株のO血清群

 大腸菌の分類の方法の一つに、大腸菌の表面にあるO抗原(O血清群)で分ける方法がありますが、全部で約180種類に分けられます。腸管出血性大腸菌感染症の原因となる大腸菌のO血清群としてはO157が最も多く報告され、また、集団事例の発生頻度、重篤症状の頻度ともに高く、公衆衛生上非常に重要な位置にいます。
保健環境研究所には2000年〜2019年までに1,824株の腸管出血性大腸菌株が搬入されました。これをO血清群別に示したのが図1です。内訳はO157が67.5%、O26が16.6%、つづいてO91、O103、O血清群別不能(OUT)、O111といった順になっています。近年、O157以外のO血清群の報告頻度が少しずつ上昇傾向にあること、国内外でO157以外による重篤な症状を含む集団事例の報告されていることから、O157以外の腸管出血性大腸菌への関心も高まりつつあります。当所においてもこれらの動向に注視しつつ検査及び研究を行っています。

図1 保健環境研究所に搬入された腸管出血性大腸菌株のO血清群別内訳(2000〜2019年、総数1,824株)


過去の検査状況は以下のリンクから該当年度をご覧ください

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