福岡県感染症発生動向調査情報

第16週分(平成12年4月17日〜4月23日)

A群溶血レンサ球菌

平成12年第16週の感染症発生動向調査情報では、これまで減少傾向を示していた感染性胃腸炎がまた増加に転じ、最も多くなっています。次に多いのは水痘ですが、A群溶血レンサ球菌咽頭炎と手足口病が増加しています。今週は、A群溶血レンサ球菌咽頭炎についてお話しします。

A群溶血レンサ球菌の感染によって起こる病気には、咽頭炎、中耳炎、産褥熱などの炎症や、しょう紅熱 、丹毒、リウマチ熱などがあります。また、1990年代に入って敗血症性ショックを起こす劇症型A群溶血レンサ球菌感染症が報告されるようになり、「ヒト喰いバクテリア」として英国の新聞などでも取り上げられました。

これらのうち、A群溶血レンサ球菌咽頭炎は、福岡県においては3歳以上が80%を占めており、5〜6月初旬と11〜12月頃に増加しています。

症状としては、発熱(38.5℃以上)があり、咽頭炎が起こってのどが赤くはれ強い痛みがあり、さらに吐き気や腹痛を伴う場合があります。のどに化膿が起こらなければ、3〜4日で熱も下がり1週間程度でなおる病気です。ペニシリンなどの抗生物質がよく効きます。

感染経路は、患者ののどからの分泌物からの飛沫感染ですが、ときに食品(ミルク、たまご、サラダ、弁当など)によって経口感染し集団発生が起こることがあります。
  潜伏期は1〜3日ですが、この時期を含めて2〜3週間ぐらいは感染力がありヒトとの接触は避けることが必要ですが、抗生物質の投与をはじめて1日程度で感染力が低くなります。 A群溶血レンサ球菌咽頭炎が治った後1〜2週間して、腎臓の糸球体腎炎やリウマチ熱が起こることがあるので注意が必要です。

また、劇症型A群溶血レンサ球菌感染症は全国で毎年30例前後が確認されており、比較的まれな病気です。

症状としては、咽頭炎がみられ熱がいったん下がりかけた時期に再び38℃以上の発熱と手足や腰の筋肉痛、下痢や嘔吐などが見られます。この病気は敗血症性ショックなどを起こし、死亡率が約40%にも達しますので、これらの症状がみられたら早急に医療機関を受診しましょう。