福岡県感染症発生動向調査情報

第21週分(平成12年5月22日〜5月28日)

無菌性髄膜炎

今年第21週の感染症発生動向調査情報では、感染性胃腸炎が最も多くなっていますが、前週の85%に減少しています。手足口病がさらに増加しています。無菌性髄膜炎は先週は7例、今週は3例で、手足口病などに合併したという報告があっています。

今週は無菌性髄膜炎についてお話しします。髄膜とは、脳や脊髄などの中枢神経を包んでいる膜のことで、軟膜、硬膜、クモ膜の3つの膜を指します。

髄膜炎はその原因によって、細菌性髄膜炎、無菌性(ウイルス性)髄膜炎、真菌性髄膜炎などに大別されます。

これらのうち、細菌性髄膜炎と無菌性髄膜炎は厚生省の感染症発生動向調査事業の対象疾患であり、定点医療機関(当該患者を診断した場合に報告をお願いしている医療機関)から発生報告が行われています。

無菌性髄膜炎を起こすウイルスとしては、エンテロウイルス(手足口病を起こすエンテロウイスル71型やコクサッキーウイスル、急性灰白髄炎を起こすポリオウイルスなどが含まれる)やエコーウイスル、ムンプスウイルス(流行性耳下腺炎を起こす)、単純ヘルペスウイルスのほか、麻しん、風しん、水痘・帯状疱疹やインフルエンザウイルスなどがあります。

また、無菌性髄膜炎は夏〜初秋に好発し、10歳未満の子どもが患者の約8割を占め、症状としては、発熱、嘔吐、頭痛、意識障害、けいれんなどがあります。乳児の場合は、音に敏感になったり、不機嫌などが目立ちますが、大泉門(乳児の頭の前の方で骨と骨の継ぎ目の柔らかい部分)の膨隆で気づかれることもあります。。

抗ウイルス剤による特異的な治療はほとんどなく、脱水の治療や安静を目的として輸液などが行われますが、細菌性髄膜炎(このうち化膿性髄膜炎の死亡率は約10%)などと比較すると予後は概ね良好です。福岡県ではこのところ、手足口病に伴う無菌性髄膜炎の報告が続いており、今後とも注意が必要です。