福岡県感染症発生動向調査情報

第36週分(平成12年9月4日〜9月10日)

腸管出血性大腸菌感染症(O157)

今年第36週の感染症発生動向調査情報では、流行性角結膜炎の報告が今年最高となっています。全国的には、腸管出血性大腸菌感染症の報告が多くなっています。

今週は、腸管出血性大腸菌感染症についてお話します。ヒトの腸内には、病原性のない(非病原性)大腸菌が常在しています。これ以外で下痢などの症状を起こす病原性のある大腸菌は、腸管病原性(下痢原性)大腸菌と呼ばれ、腸管出血性大腸菌感染症もその一つです。腸管出血性大腸菌感染症には、最も報告の多いO157のほかに、O17、O26、O111などのいろいろな種類があります。

腸管出血性大腸菌感染症は、1982年に米国で集団発生が報告されたのが最初ですが、日本では1996年(平成8年)7月に大阪府堺市における大規模な集団発生が起こり、1ヶ月間に7,000人を越える患者が報告され、12名の死者が出ました。

発生時期は6〜10月が多く、5歳以下の子どもと高齢者が感染を受けやすく、重症化しやすいといわれています。

潜伏期は平均3〜5日程度(長い場合は十数日)で、軽度の発熱や体のだるさのあとに下痢と腹痛などが見られます。初めは水様性の下痢(一日10〜20回)で、しだいに強い腹痛と血便が出るようになります。しかし、感染してもこのような出血性大腸炎の症状がみられるのは約半数で、残りの半数は無症状か下痢のみでおさまります。

合併症として、下痢が始まってから5〜7日ごろ、10〜30%に溶血性尿毒症症候群(HUS)がみられ、重症になるとけいれんや意識障害などの脳症を伴います。

治療としては、安静と水分補給、抗菌剤の服用などが行われています。

感染経路としては、加熱が不充分な牛肉などの食肉、汚染された食肉から二次的に汚染された生野菜などの食品、汚染された飲料水やプールの水、患者との直接接触などが考えられています。食肉を取り扱った器具や手指を洗浄せずに、そのまま次の食品を扱ったり、飲食に使用した場合は感染の危険性が高くなります。
  予防のためには、食品の取り扱いに注意し、食前や排便後、おむつ交換後などに十分な手洗いを行うなどに気をつけましょう。