福岡県感染症発生動向調査情報

第37週分(平成12年9月11日〜9月17日)

レジオネラ肺炎

今年第37週の感染症発生動向調査情報では、麻しん、流行性耳下腺炎、流行性角結膜炎の発生が続いています。

今週は、レジオネラ肺炎についてお話します。この病気はレジオネラ属菌によって起こるレジオネラ症の一つです。この菌は、レジオネラ肺炎の他に、発熱(ポンティアック熱)や、敗血症、中耳炎、腹膜炎、心内膜炎などのさまざまな症状を引き起こします。

日本においてレジオネラ症は、平成11年に年間53件が報告されています。

レジオネラ肺炎は、1976年7月に米国のフィラデルフィア市における在郷軍人の集会で、約4,400人の参加者のうち184人が発症し、うち29人が死亡した集団発生があり、その際この病気が発見されたので在郷軍人病とも呼ばれます。

レジオネラ属菌は、河川や土壌などの自然環境の中に広く生息していますが、冷却塔(クーリングタワー)や給湯・給水タンク、24時間風呂などにも生息することがあり(表を参照)、施設や病院内での感染なども報告されています。

感染経路としては、この菌を含む水滴や空気、土埃を吸い込むことによって感染しますが、ヒトからヒトへはうつらないので患者を隔離する必要はありません。

レジオネラ肺炎は、感染しても発病率は1〜6%と低いのですが、感染を防止する機能が低下した高齢者や免疫抑制剤を使用している人、糖尿病、腎移植を受けた人などは、発症する危険性が高くなり、重症化しやすいので注意が必要です。

症状としては、2〜10日の潜伏期ののち、全身倦怠感、頭痛、食欲不振、筋肉痛などに続いて、38℃以上の高熱、悪寒、胸痛、咳(はじめはコンコンといった乾いた咳で次第に黄色から赤褐色の痰を伴った咳になる)が見られます。また、発症時から悪心、下痢、腹痛が見られ、悪化すると意識障害、黄疸、消化管出血などの重篤な合併症も見られ、経過が早いため、早期に適切な抗菌剤などの治療を行うことが必要です。

以前は早期診断が難しいとされていましたが、最近、尿中の抗原を検出する方法など早期診断のための検査ができるようになってきました。

病気の予防のために、冷却塔や給湯・給水タンクなどのレジオネラ菌属の生息する場所の定期的な清掃や消毒が必要です。