福岡県感染症発生動向調査情報

第38週分(平成12年9月18日〜9月24日)

MRSA感染症

今年第38週の感染症発生動向調査情報では、流行性耳下腺炎や手足口病による髄膜炎が報告されています。手足口病の報告数は減少していますが、髄膜炎などの合併症に注意が必要です。

今週は、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染症についてお話します。

黄色ブドウ球菌は、ヒトの皮膚や鼻の中などに常在しているけれども無害のものから、化膿や肺炎、敗血症などを起こすものまで様々な種類があります。この中で、メチシリンという抗生物質が効かないブドウ球菌による感染症が、MRSA感染症です。

1920年代にペニシリンが発見されからたくさんの抗生物質が開発され、メチシリンは1960年代に使用が開始されましたが、1985年ごろから大病院を中心とした流行が見られるようになりました。この当時は、まだ日本においてMRSA感染症の有効な治療薬がなかったため、これを過剰に危険視する風潮が生まれました。

MRSAの被害を受けやすいのは、体の抵抗力が著しく低下し感染を受けやすい状態になった人(表を参照)です。このような人は入院治療を受けている場合が多く、そのためMRSA感染症は、しばしば院内感染対策の中で主要な病気とされてきました。

健康な人の場合は、たとえば鼻の中にMRSAがついても自分の抵抗力でそれを排除することができますが、なかには抵抗力が低下していてMRSAを排除できず、保菌者となることがあります。このような方が退院して家庭に帰ってこられる場合、家族は感染拡大を心配されますが、予防対策については次のとおりです。

病院では、体の抵抗力が著しく低下しMRSA感染症に罹ると治りにくい患者さんが多いため様々な予防対策がとられますが、家庭においては、それほど厳重な対策は必要ありません。最も大切なことは、MRSAの保菌者(および患者)のお世話をしたあと、すぐに流水で石鹸を使いしっかり手洗いをして、菌を広げないようにすることです。

衣類やシーツなどは通常の洗濯・乾燥でよく、マットレスやふとんなどは日光消毒をします。食器も別にする必要はなく、床ずれなどがなければお風呂も普通に入って構いません。そのほか様々な予防対策については、退院時に医療機関でよく聞いておき、困ったり悩んだりした場合は早めに相談できるようにしておくことをおすすめします。