福岡県感染症発生動向調査情報

第45週分(平成12年11月6日〜11月12日)

トリコモナス症

今年第45週の感染症発生動向調査情報では、感染性胃腸炎が急増しています。また、インフルエンザの報告が先週は1件でしたが、今週も2件報告されています。

12月1日は世界エイズデーですが、今週は性感染症の一つあるトリコモナス症についてお話します。

トリコモナス症は、腟トリコモナス原虫によって起こる病気です。男性では前立腺や尿道、精嚢に、女性では腟、子宮、尿道、膀胱などに感染します。日本では、成人女性の3〜10%、男性の1〜2%が感染しているという報告があります。

感染していても無症状のことも多いのですが、女性の方が男性より症状が出やすく、このうちトリコモナス腟炎が最も多く、代表的なものです。潜伏期は4〜12日で、平均1週間程度といわれています。

トリコモナス腟炎の症状としては、帯下(おりもの)が増加し、かゆみや痛みがあります。帯下は緑黄色で小さな泡をたくさん含んでおり、時に悪臭を伴います。

治療としては、ニトロイミダゾール系の薬剤を内服しますが、この薬は妊娠12週以前の妊婦には発がん性があるため使えないので、この場合は腟剤を使います。

感染経路としては、性行為によるものが最も多いとされていますが、浴場や便器、タオル、手指などによる感染も考えられています。

性行為による感染の場合、治療にあたっては必ず性パートナーついても感染の有無を検査します。両者に感染があった場合は、同時に治療しないと一方が治ってもまた、相手から感染させられるといういわゆるピンポン感染を起こします。感染を広げないために、治癒するまでは性交を控えること必要です。

また、この病気に感染している場合、淋菌感染症などの他の性感染症に同時に感染している場合もあり、検査を受けることをおすすめします。

この病気の予防のためには、他の性感染症と同じで、複数の性パートナーを持たない、コンドームを適切に使うなどの安全な性行動を選択することが大切です。