福岡県感染症発生動向調査情報

第51週分(平成12年12月18日〜12月24日)

コレラ

今年第51週の感染症発生動向調査情報では、感染性胃腸炎の報告が最も多くなっていますが、溶レン菌咽頭炎、水痘、流行性耳下腺炎の報告数も増えています。インフルエンザの報告は43件でした。

今週は、コレラについてお話しします。コレラの原因はビブリオ・コレラという細菌です。この菌はもともとインドのガンジス川のデルタ地帯に常在しており、19世紀に6回の世界的大流行を起こしました。現在、世界保健機構(WHO)に報告されている世界のコレラ患者数は、年間20〜50万人です。

日本では世界的な流行を受けて、幕末から明治のはじめあたりから患者の発生がみられています。東南アジア地域において感染した人が入国して発症する例がほとんどでしたが、1977年頃から汚染した食品を介した集団感染例がときどき報告されるようになりました。

感染経路としては、糞便や嘔吐したもので汚染された食物や水を介するものですが、接触感染の危険性は少ないといわれています。海産物としてはエビ、カニ、イカなどが原因となっています。

潜伏期は数時間から5日間で、通常2〜3日です。

症状としては、急激に腹痛のない水様性の下痢で発症し、時に嘔吐を伴いますが、発熱は伴いません。下痢の回数が多く脱水症状を起こすため、治療としては水分や電解質の補給が大切です。また、排菌期間を短縮するためにテトラサイクリン、エリスロマイシンなどの抗生物質を使用することがあります。

主要な症状が消えても数日間は便に菌を排出するので、周囲に感染を広げないように注意することが必要ですが、まれに長期に胆のうに保菌する者がいて間欠的に排菌することがあります。

感染予防のためには、排便後や調理や食事の前の十分な手洗いが大切ですが、海外で衛生状態のあまりよくないところでは、生水、生ものの飲食だけでなく、フルーツ(自分でむいたりして食べるものを除く)や水割りの氷やうがいの水にも注意が必要です。