福岡県感染症発生動向調査情報

第52週分(平成12年12月25日〜12月31日)

破傷風

今年第52週の感染症発生動向調査情報では、感染性胃腸炎の報告が最も多くなっていますが、先週よりは減少しています。また、手足口病、伝染性紅斑、麻しん(はしか)の報告が多くなっています。インフルエンザの報告は50件でした。

今週は、破傷風についてお話します。この病気の原因は破傷風菌という細菌です。

潜伏期は通常4日〜2週間程度ですが、短い場合は1日のこともあり、潜伏期が短いほど予後が悪いと言われています。発生数は少ないですが、死亡率が高い疾患の一つです。

この菌は土や動物の消化管に生存しており、皮膚の傷口から体に入りますが、抜歯、麻薬・覚醒剤の注射針の刺し傷、小さな傷などから入ることもあります。

破傷風菌は空気に触れない外傷部分で増えるため、けがをした場合、傷口を開きよく洗って土などの異物を取り除いておくことが大切です。

破傷風の症状としては、口を開きにくくなる、眉や口元がゆがんで笑ったような顔になる、首の筋肉が硬くなる、体が弓なりに反った様な姿勢になるなどがみられます。

症状が進むと、痛みをともなう全身のけいれんが、明るい光や突然の騒音、患者の移動などに誘発されて起こります。呼吸筋がけいれんを起こすと呼吸困難が起こり危険です。

治療としては、けいれん発作が起こらないように、暗く静かな部屋に入院させ、できるだけ刺激を与えないようにします。毒素に対してはヒト破傷風免疫グロブリン、抗菌薬としてペニシリン、その他にけいれんに対して鎮静薬などを使用します。

予防のためには、予防接種が有効で、現在、定期予防接種として、ジフテリア、百日咳との三種混合ワクチン(DPT)が乳幼児期に、また、その後、2期としてジフテリアと二種混合ワクチンが11〜12歳を対象に行われています。

ワクチンの効果は約10年間持続するといわれていますが、外傷を負った場合は、破傷風トキソイドを追加接種します。また、予防接種を受けていない人が外傷を受けた場合や、外傷の程度によって、破傷風トキソイドの他に、破傷風免疫ヒトグロブリンが投与されることがあります。