福岡県感染症発生動向調査情報

第24週分(平成13年6月11日〜6月17日)

ハンセン病

今年第24週の感染症発生動向調査情報では、手足口病の発生が先週よりさらに増加しています。先週一旦減少していた、ヘルパンギーナ、流行性耳下腺炎、水痘、伝染性紅斑などは、やや増加していますが、麻しんの報告は引き続き減少しています。今週は、ハンセン病についてお話しします。

ハンセン病は、昔からあった病気で、インドで紀元前7世紀に書かれた書物や、日本書紀という古い書物にもその記載が見られます。ハンセン病は、「らい菌」に感染して起こる慢性の病気です。昔は遺伝病だと誤解されていたこともありましたが、感染経路としては、乳幼児期などに、らい菌をたくさん排出している患者と濃厚な接触をした場合に、らい菌を吸い込んだり、接触することによって感染が起こるなどが考えられています。感染力はきわめて弱く、感染しても発病することはまれです。日本でも1年間に新たに発生する患者数は、20名前後と推定されています。

潜伏期間は、数週間から数十年(平均3〜5年)と比較的長く、皮膚と(末梢)神経の障害が起こります。皮膚には、かゆみや痛みがなくその部分だけ汗をかかないような皮疹や結節(皮膚が盛り上がったもの)が見られたりします。また、末梢神経の障害により、痛みを感じにくくなるため、指先や足底の潰瘍や熱傷を繰り返すことがあります。以前は、不治の病と考えられてきましたが、現在は、いくつかの薬を組み合わせて使う「多剤併用療法」などの有効な治療法が開発されており、治る病気です。

日本では、この病気に対して1907年(明治40年)に法律ができ、1953年(昭和28年)に「らい予防法」に改正されましたが、ハンセン病の患者は、長い間差別と偏見にさらされ、多大の苦痛と苦難を強いられてきました。1996年(平成8年)にこの法律は廃止されました。現在、全国の15カ所の療養所に約4,400人の方が入所しており、ほとんどの人はハンセン病は治っていますが、後遺症の治療のために療養生活を送っています。

国は、今年6月22日に、ハンセン病療養所入所していた方々の被った精神的苦痛を慰謝すること、ハンセン病の患者であった方たちの名誉の回復と福祉の増進を図ることなどを目的として、「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律」を制定しました。補償金は、平成8年3月31日までにハンセン病療養所に入所されていた方に対して支給されることになりましたが、お問い合わせは、下記までお願いします。