福岡県感染症発生動向調査情報

第26週分(平成13年6月25日〜7月1日)

腸管出血性大腸菌感染症(O157)

今年第26週の感染症発生動向調査情報では、手足口病、ヘルパンギーナ、伝染性紅斑が増加しています。今週は、腸管出血性大腸菌感染症のうちO157によるものについてお話しします。腸管出血性大腸菌感染症には、O157のほかに、O17、O26、O111などのいろいろな種類があります。

腸管出血性大腸菌O157は、米国で1982年に汚染された肉で作られたハンバーガーによる下痢が集団発生し、病気を起こすことが確認された菌です。日本では1996年(平成8年)7月に大阪府堺市における大規模な集団発生が起こり、1ヶ月間に7,000人を越える患者が報告され12名の死者が出て社会的な問題となりました。

現在、O157を主に保有しているのは牛ですが、感染経路としては、加熱が不充分な牛肉などの食肉、汚染された食肉から二次的に汚染された生野菜などの食品、牛の糞などで汚染された飲料水、患者が泳いだプールの水、患者との直接接触、またハエなどが菌を運ぶ経路などが考えられています。

腸管出血性大腸菌感染症は6〜10月に多く発生がみられ、5歳以下の子どもと高齢者が感染しやすく、重症化しやすいといわれています。潜伏期は平均3〜5日程度(長い場合は十数日)で、軽度の発熱や体のだるさのあとに下痢と腹痛が見られます。初めは水様性の下痢(1日10〜20回)で、しだいに強い腹痛と血便が出るようになります。しかし、感染してもこのような出血性大腸炎の症状がみられるのは約半数で、残りの半数は無症状か下痢のみでおさまります。合併症として、下痢が始まってから5〜7日ごろ、10〜30%に溶血性尿毒症症候群(HUS)がみられ、重症になるとけいれんや意識障害などの脳症を伴うので医療機関で適切な治療を受けましょう。治療としては、安静と水分補給、抗菌剤の服用などが行われています。

食肉を取り扱った器具や手指を洗浄せずに、そのまま次の食品を扱ったり、飲食に使用した場合は感染の危険性が高くなります。予防のためには、例えば、焼き肉をする時、生の肉を取り扱う箸と、口に入れる箸は別にするなどに気をつけましょう。また、食品の取り扱いに注意すると同時に、調理前、食前、排便後(おむつ交換後も)は十分な手洗いを行いましょう。