福岡県感染症発生動向調査情報

第31週分(平成13年7月30日〜8月5日)

エイズ(症状と治療)

平成13年第31週の感染症発生動向調査では手足口病やヘルパンギーナや麻しんが、引き続き減少しています。流行性耳下腺炎は、引き続き報告が多い状況が続いています。

今週は先週に引き続き、エイズ(後天性免疫不全症候群)の治療についてお話します。この病気ではHIV(ヒト免疫不全ウイルス)が、体を守る免疫というしくみをコントロールする細胞を破壊し、そのため免疫が十分働かない状態となります。

HIVの主な感染経路は、異性間や同性間の性行為、血液や血液製剤(注射針の共用、針刺し事故等)、母子感染の3つのルートがあります。このうち、針刺し事故での感染確率は約0.3%、母子感染で子どもに感染する確率は約4分の1程度と報告されています。この3つの染経路のうち日本において最も多いのは、性行為による感染です。 

HIVに感染すると、2週間〜8週間後に38℃以上の発熱やのどの痛み、関節痛、リンパ節の腫れ等インフルエンザとよく似た症状や発疹などが見られることがあります。その後は数年から十数年に及ぶ無症状の時期が続きます。この時期にも体の中でHIVが増えて続け、免疫細胞を破壊していきます。免疫細胞が減ってくると、免疫が正常なときにはかからないような病気(カリニ肺炎、悪性リンパ腫など)にかかるようになります。

感染してから発病するまでの期間は平均して10年といわれていますが、無症状の期間も長いため、検査を受けていなければ、感染していても気づかない場合があります。

エイズの治療薬としては、日本では1987年にレトロビル(AZT)が認められ、1996年までは10年間で3剤が、1997年〜2000年までの4年間で12剤と多くの薬が使えるようになりました。現在、いくつかの薬を組み合わせた多剤併用療法が行われており、エイズ患者の死亡数が激減してています。

性的接触によるHIV感染の予防のためには、性行為のはじめからコンドームを使用する(感染の危険性の多い肛門性交の場合、特に注意が必要です)、不特定多数のパートナーとの性交渉を避けることが大切です。また、クラミジアなどの性感染症にかかっている場合も、HIV感染の危険性が増加しますので注意が必要です。