福岡県感染症発生動向調査情報

第32週分(平成13年8月6日〜8月12日)

性器ヘルペス

今年第32週の感染症発生動向調査情報では、全国的に腸管出血性大腸菌感染症の報告が多く、死亡も3例あります。福岡市南区の保育園ではO26,VT1+の集団発生があり、O157の散発例の報告も多くなっています。

今週は性感染症の一つである性器ヘルペスについてお話します。性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスに感染し、性器に潰瘍性の病変が起こる病気です。このウイルスは感染したあと神経節に潜伏し、免疫などの体の抵抗力が低下した場合に再発するという特徴を持っています。初発の患者さんの平均年齢は20代後半で、再発の患者さんの平均年齢より10歳程度若いという報告があります。

初発の場合は、再発より症状が強く、感染して2〜10日後に外陰部にかゆみや腫れがみられ、次に小さな水疱が多発します。これはびらんや潰瘍となり痛みを伴います。これらはしだいに痂皮(かさぶた)となり、2〜6週間以内に治ります。他に排尿時に痛みや足の付け根のあたりのリンパ節が腫れて痛いなどの症状も見られることがあります。女性のほうが男性よりも症状が重い傾向があるといわれています。

再発は、強い日焼け、疲労、性交、月経などの身体的または精神的なストレスや、妊娠、エイズ感染、副腎皮質ステロイド剤や抗がん剤の投与時など免疫力が低下した場合に起こりやすく、症状がでる数日前から腰の痛みや足のしびれ、局所のかゆみなどがみられることがあります。再発時の症状は、初発時よりも軽く、持続期間も短くなります。

感染経路としては、性的接触(口腔と性器の接触によるものも含む)のみならず、病変部との直接接触や、手指や器具などを介した接触によるものもあります。単純ヘルペスウイルスが、粘膜や皮膚などの小さな傷から侵入することによって感染します。

治療としては、抗ウイルス剤(アシクロビル)を使用します。そのほかに痛みの強い場合は鎮痛薬なども一緒に使われます。

予防としては、他の性感染症と同様に安全な性行動を選択することが必要です。病変部との直接接触を避け、もし接触した場合は、すぐに手洗いなどを行い感染を予防しましょう。また、分娩が近づいた妊婦が発症した場合、新生児が産道を通る際に感染し、母親が初めて感染していた場合には約3分の1が新生児ヘルペスを起こし、重症となることがあるため、予防のために帝王切開が行われています。