福岡県感染症発生動向調査情報

第33週分(平成13年8月13日〜8月19日)

トリコモナス症

平成13年第33週の感染症発生動向調査では、お盆休みの影響で多くの疾患の報告が減少しています。今週も腸管出血性大腸菌感染症の報告が続いており、引き続き注意が必要です。今週は性感染症の一つあるトリコモナス症についてお話します。

トリコモナス症は、トリコモナス原虫の感染によって起こる病気です。通常は性行為により感染しますが、浴場や便器、タオル、手指を介した感染もあります。また、まれですが産道感染も考えられています。

感染や発病は、男性よりも女性に多くみられます。女性では、腟に感染して腟炎を起こすことが多いのですが、外陰炎や尿道炎、膀胱炎なども起こります。しかし、感染しても約4分の1の人に自覚症状がないという報告があります。男性では、前立腺炎や尿道炎などがおこりますが、無症状のことも多いといわれています。

このうちトリコモナス腟炎は、潜伏期が4〜12日で(平均1週間)、緑黄色で小さな泡をたくさん含んで悪臭を伴う帯下(おりもの)が増加します。同時に、腟や外陰部のかゆみや痛みがあります。トリコモナス腟炎は、細菌性腟炎と合併していることが多く、とくに妊婦が感染した場合は、早産や妊娠の早い時期の破水などを起こす危険があるといわれています。

トリコモナス症の治療薬は、肝臓におけるアルコールの分解を阻害し、薬を内服している時期に飲酒をすると、動悸、頭痛、呼吸困難などを起こすことがあるため、内服中は飲酒を避けましょう。治療薬としては、妊娠12週以内や授乳中の場合は、児への影響があるため腟剤を使いますが、それ以外の場合は内服の方が効果が確実だといわれています。

また、治療にあたっては必ず性パートナーついても検査や治療が必要です。両者に感染があった場合は、同時に治療しないと一方が治ってもまた、相手から感染させられるといういわゆるピンポン感染を起こすからです。感染を広げないために、互いに治癒するまでは性交を控えるようにしましょう。