福岡県感染症発生動向調査情報

第40週分(平成13年10月1日〜10月7日)

炭疽

平成13年第40週の福岡県感染症発生動向調査情報では、マイコプラズマ肺炎は発生が続いており、秋から冬にかけて流行時期にあたるため今後も注意が必要です。今週は、アメリカ合衆国で問題になっている炭疽についてお話しします。

炭疽は、炭疽菌の感染によって起こる病気です。ウシ、ヒツジ、ウマ、ヤギなどの動物と人間の両方がかかります。この菌は、通常は土壌の中にいて、干ばつや洪水、長雨などの異常気象のあと増殖し、長い間生存すると考えられています。世界的各地で発生が見られますが、アジアにおいては、トルコからパキスタンにかけての地域が炭疽ベルトと呼ばれ、この地域からの患者の報告数は、年間数百人といわれています。日本では、明治から昭和初期にかけて、家畜に炭疽の発生が見られていましたが、飼育環境や衛生状態の改善により、戦後は散発的で、ほとんど見られなくなりました。ヒトの場合は、1965年(昭和40年)に同じ肉を食べた40人の集団発生が見られていますが、1970年代半ば以降は、10年間で数例の報告がある程度となっています。

炭疽は、感染経路から3つに分けられます。皮膚(傷口)から感染する皮膚炭疽、吸い込んで感染する肺炭疽(吸入炭疽)、炭疽菌に汚染された食品の摂取により感染する腸炭疽(胃腸炭疽)の3つです。皮膚炭疽が、全体の95%以上を占めており、肺炭疽はほとんど稀です。炭疽は、ヒトからヒトへは感染しません。

症状は、表のとおりで、比較的軽症のものから重症になるものまでいろいろなタイプがあります。

予防のための(ヒト用)ワクチンは、アメリカ合衆国、中国、ロシアなどでは販売されているとのことですが、現在、日本では販売されていません。治療には、ペニシリンなどの抗生物質が使われます。

炭疽は、現在、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律で、4類感染症とされており、診断した場合、医師は7日以内に最寄りの保健所長を経由し県知事に届け出なければなりませんが、厚生労働省では、現在、診断した場合すみやかに届け出をしていただくように呼びかけを行っているところです。