福岡県感染症発生動向調査情報

第43週分(平成13年10月22日〜10月28日)

インフルエンザ(予防接種法の改正)

今年第43週の感染症発生動向調査情報では、感染性胃腸炎の報告が最も多くなっており、増加傾向にあるため注意が必要です。今週は、インフルエンザと予防接種法の改正についてお話ししたいと思います。

インフルエンザの原因は、インフルエンザウイルスという病原体です。このウイルスには、A,B,Cの3つの型があり、A型は、ウイルスの表面のタンパク質のタイプによって、さらに細かく分けられます。近年流行しているのは、A型のソ連型と香港型およびB型です。

麻しん(はしか)のように、一度かかるか、または予防接種をすると免疫ができ、その後はかかりにくくなるものがありますが、インフルエンザの場合は、ウイルスの表面のタンパク質が少しずつ変異するために、流行が繰り返されると考えられています。とくに、A型は数年から数十年に一度大きな変異を起すため、日本では、1918年(大正7年)からスペインかぜ、1957年(昭和32年)からはアジアかぜ、1968年(昭和43年)からは香港かぜ、1977年(昭和52年)からはソ連かぜなどの大流行がみられています。 

日本では、1962年(昭和37年)からインフルエンザワクチンの接種が導入されました。学校で流行し、それを家に持ち帰って流行が広がると考えられていたため、小・中学生を中心として接種されていました。1980年代半ばまで接種率は60%程度で、流行を抑えられず、予防接種の有効性を疑問視する声も聞かれ、接種率はさらに低下しました。1994年(平成6年)の改正によって、予防接種法の対象疾病からはずされ、希望する人が自己負担で接種する「任意接種」となり、あまり接種されなくなってしまいました。

しかし、1995年(平成7年)に再び流行がみられ、肺炎などの合併症を起こして死亡する高齢者の増加などが社会問題となり、調査・研究が行われた結果、高齢者への予防接種は、インフルエンザにかかった場合、重症化や死亡を予防するには有効であることが証明されました。それを受けて、高齢者のインフルエンザワクチンを定期接種とする、予防接種法を一部改正する法律が、平成13年10月31日に、国会で可決・成立しました。このあと、政省令などが決められてから、施行される予定となっています。

例年1〜2月にインフルエンザの患者が増加するため、多くの市町村では現在準備に追われています。法施行後、インフルエンザワクチンの接種を希望する高齢者は、市町村が指定する医療機関等(集団接種の場合は指定する場所)で接種を受けた場合、接種費用の一部(全部の場合も)を市町村に負担してもらえると同時に、市町村による予防接種の健康被害の救済も受けられるようになります。