福岡県感染症発生動向調査情報

第50週分(平成13年12月10日〜12月16日)

セレウス菌による食中毒

今年第50週の感染症発生動向調査情報では、インフルエンザの報告が増加しており、北九州市、福岡市で今年度はじめてインフルエンザウイルス(Aソ連型)が分離されています。例年12月下旬から、インフルエンザの患者さんが増えはじめますので、予防を心がけましょう。また、これから年末年始にかけて、暴飲暴食や不規則な生活によって体調を崩すと、体の抵抗力も低下して感染症にかかりやすくなりますので気をつけましょう。

今週は、感染性胃腸炎の一つで、セレウス菌による食中毒についてお話しします。今月初め、熊本県で、あん入りのもちを食べた保育園児らが、嘔吐などの症状を訴え、あんからセレウス菌が検出されたというニュースがありましたが、もともとセレウス菌は、土の中やちりやほこりの中など、自然界に広く分布する菌です。

しかし、セレウス菌による食中毒は、細菌によって起こる食中毒の約1%程度です。例えばサルモネラ食中毒では、菌量が100〜1,000個でも発病する場合がありますが、セレウス菌の場合は、食品1gあたり1千万〜1億個の大量の菌が必要だといわれています。

セレウス菌による食中毒は、主な症状や原因となる菌が出す毒素の違いから、嘔吐型と下痢型に分けられます。感染してから発病するまでの時間は、嘔吐型の方が短く、30分〜5時間で、下痢型は、6〜15時間です。日本では、嘔吐型の方が多く報告されています。

原因となる食品にも違いがみられ、嘔吐型では、米飯や焼き飯などが多く、下痢型では、食肉やスープ類などが多くなっています。福岡県においても、1994年と1997年にセレウス菌による食中毒が起こっていますが、これらの原因は、ピラフやチャーハンによるものでした。

治療としては、嘔吐や下痢による脱水に対する水分等の補充が行われますが、ほとんどの場合は、発病から数日以内に回復します。

予防のためには、調理した食品をなるべく早く食べることが大切です。菌や嘔吐型を起こす毒素は熱にも強いため、加熱調理した食品でも、そのまま長時間放置していた場合、菌が増えて毒素を作り、食中毒を起こす可能性があります。また、やむを得ず保存するときは、加熱調理後、2時間以内に冷蔵することが大切です。