福岡県感染症発生動向調査情報

第2週分(平成14年1月7日〜1月13日)

セラチアの感染

平成14年第2週の感染症発生動向調査情報では、年末年始のため報告数全体が減少していた影響で、多くの疾患の報告数は先週より増加しています。とくにインフルエンザは、先週の3倍を越え、県内各地区でも増加しており、引き続き注意が必要です。また、感染性胃腸炎や、A群溶レン菌咽頭炎も、多数報告されています。

今週は、院内感染の原因の一つであるセラチア感染症についてお話しします。 

セラチアは細菌の一つですが、もともと土の中や汚れた水など湿った環境にいることが多い菌です。赤痢菌などと違い、セラチアは病気を起こす力が弱い菌で、体の抵抗力が低下していなければ、問題にならない菌です。しかし、体の抵抗力がずいぶん低下している人に感染した場合、尿道や膀胱の炎症、肺炎、髄膜炎、敗血症などさまざまな症状を起こし問題となります。

日本においては、これまで平成10年と平成12年にそれぞれ東京都墨田区と大阪府堺市の病院で、複数の入院患者に感染が起こったという報告があります。

セラチアの感染は、菌に汚染された器具や医療従事者の手指を介して感染が広がります。器具としては、人工呼吸器や、ネブライザー(薬剤を吸入するための噴霧器)、尿道カテーテルなどがあります。

感染しやすい人としては、体の抵抗力が低下しており免疫が十分働かない状態にあり、かつ、前述のような器具を使用する機会の多い人で、例えば、手術後に人工呼吸器をつけている人、高齢者で心臓や慢性の肺の病気を持っている人、がんなどの基礎疾患を持っている人などです。

セラチアの治療には、抗菌薬が使われますが、複数の抗菌剤に抵抗する菌があり、また、もともと体の抵抗力が低下した人に感染し発病するため、早期に適切な治療薬が投与されないと命に関わる場合があります。