福岡県感染症発生動向調査情報

第12週分(平成14年3月18日〜3月24日)

マスクと感染予防

今年第12週の感染症発生動向調査情報では、インフルエンザの報告数は再び減少し、1定点医療機関あたりの報告数は7.7(前週8.9)となっています。地区別では、北九州が7.4(前週5.7)、福岡8.4(前週10.8)、筑豊5.2(前週3.9)、筑後8.2(前週11.6)と、北九州、筑豊地区は増加し、福岡、筑後地区は減少しています。

今週は、マスクと感染予防についてお話しします。

マスクは、大正11年にスペインかぜ(インフルエンザ)が流行した時に、予防のために効果的な方法として勧められ、一般的に広く使用されるようになったと言われています。

マスクは、患者のくしゃみや咳によって飛ぶ鼻汁や分泌物を、周囲の人が吸い込まないために使われます。くしゃみや咳によって飛ぶ「飛沫」には、ウイルスや細菌などの病原体が水分に包まれた形となっています。この「飛沫」が口や鼻から直接体中に入って周囲の人に感染を起こすことを「飛沫感染」といいます。また、飛沫の周囲の水分が蒸発して「飛沫核」というごく小さな粒子(5ミクロン以下)になって空中を漂って感染を起こすことを「空気感染(または飛沫核感染)」といいます。「飛沫」は比較的重いため、1m以上飛ぶことはできませんが、「飛沫核」は軽いため、遠くまで飛ぶことができます。一般的に使用されるマスクは、「飛沫感染」の予防にはある程度有効と考えられていますが、「飛沫核」はごく小さくマスクの網の目を通り抜けてしまうため、「空気感染」の予防には十分ではないといわれています。そのため、結核の患者を治療する医療機関などでは、「空気感染」も予防できる特殊なマスクが使われています。

以前は、インフルエンザの予防にはマスクが有効と考えられていましたが、現在では、インフルエンザウイルスの「飛沫核」を吸い込むことを防ぐには不十分であると考えられています。しかし、マスクを着用すると、低温で低湿度の空気がのどの粘膜に直接あたることを防ぎ、のどの粘膜への刺激を避け、のどの粘膜の抵抗力を保つことができるという利点があります。

また、患者さん自身がマスクを着用し、くしゃみや咳によって病原体が飛び散ることを防ぐことは、感染を広げないために大切なことです。