福岡県感染症発生動向調査情報

第26週分(平成14年6月24日〜6月30日)

腸管出血性大腸菌について

今週第26週の感染症発生動向調査情報では、手足口病、流行性角結膜炎、淋菌感染症の報告数が若干増加しています。

さて、福岡市の保育園で腸管出血性大腸菌O157の集団発生があり、連日新聞などで報道されているのをみなさんも耳にされているのではないでしょうか。そこで、今週は腸管出血性大腸菌感染症についてお話しします。

腸管出血性大腸菌感染症を起こす代表的な病原性大腸菌O157は、米国で1982年に集団感染が発生し、病気を起こすことが確認された菌で、日本では1996年7月に大阪府堺市において大規模な集団発生が起こり、社会的な問題となりました。

通常、腸管出血性大腸菌を保有しているのは主に牛などの反芻動物ですが、ヒトへの感染経路は飲食物等を介した経口感染で、牛肉などの食肉、食肉から二次的に汚染された食品、牛の糞などで汚染された飲料水、患者の便で汚染されたものを口にした場合です。

腸管出血性大腸菌に感染すると、一般に乳幼児や小児、高齢者が重症化しやすいといわれています。潜伏期は平均3〜5日程度で、軽度の発熱や体のだるさに続いて下痢、腹痛が見られます。初めは水様性の下痢(1日10〜20回)で、しだいに強い腹痛と血便が出るようになります。注意が必要なのは腎臓の障害などをきたす溶血性尿毒症症候群(HUS)とよばれる合併症です。下痢が始まってから5〜7日ごろに約10%の方にみられ、けいれんなどの脳症を伴い重症化する事があります。初期症状には顔色不良、尿量減少、浮腫、意識障害といったものがありますので、このような症状が見られたら早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。

予防のポイントは食品の衛生的取扱いです。特に生肉などを取り扱う時には、注意が必要です。手洗いを十分に行い、生肉などを切った包丁やまな板は、洗ってから熱湯をかけたのち使う事が大切です。また、生の肉の汁などが、果物やサラダなど生で食べる物や調理の済んだ食品にかからないようにしましょう。

腸管出血性大腸菌感染症の原因食品等と特定あるいは推定されたものを表にしています。このように腸管出血性大腸菌は様々な食品や食材から見つかっていますので、食品の洗浄や加熱などを十分に行うことが大切です。