福岡県感染症発生動向調査情報

第28週分(平成14年7月8日〜7月14日)

無菌性髄膜炎について

今週第28週の感染症発生動向調査情報では、前週減少が見られたヘルパンギーナと風しんの報告数は再び増加しています。その他に報告数の増加が見られたものとしては、水痘、手足口病、無菌性髄膜炎、性器クラミジア感染症などがありました。前週増加した伝染性紅斑の報告数は今週は減少しています。

さて、福岡県でも報告数の増加が見られていますが、全国的にも無菌性髄膜炎の増加が見られています。特に四国においてはエコーウィルスE11、北陸・近畿地方を中心としてエコーウィルスE13によるものの増加が報告されています。そこで、今週は無菌性髄膜炎についてお話しします。

無菌性髄膜炎とは、脳や脊髄などの中枢神経系をおおっている髄膜という膜に炎症が起きる病気で、普通の検査では細菌感染と言えないという意味で“無菌性”髄膜炎と呼ばれています。無菌性髄膜炎を起こす原因としては、多種多様の病原体が関与していますが、ウィルスによるものが最も多く、このうちでもエコーウィルスやコクサッキーウィルスなどのエンテロウィルスの感染によるものが約85%を占めています。このウィルスは、腸管の中で増え、糞便中に排出されて、のどや鼻から侵入します。このウィルスに感染しても、大部分の人は無症状か夏かぜ様の症状で終わるのですが、子どもなどでは無菌性髄膜炎を起こすことがあります。

例年初夏から発生が増加し始め、夏から秋にかけて流行が見られます。10歳未満の子どもが患者の約8割を占め、主に乳幼児、学童に多い病気です。

一般的な症状としては、急な発熱、頭痛、嘔吐などです。しかし、乳幼児では頭痛を訴えることができず、発熱や不機嫌、下痢ということで発見されることがありますので、子どもの様子に注意しましょう。

無菌性髄膜炎は重症のものもありますが、通常は数日で後遺症を残さず治ります。予防の方法としては、うがいや手洗いをきちんと行うこと、患者の鼻水、痰、便や、それらがついたものを介して感染しますので、これらの取扱いに気をつけましょう。また、確実な予防法はないため、上記のような症状が見られた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。