福岡県感染症発生動向調査情報

第30週分(平成14年7月22日〜7月28日)

レジオネラ症について

今週第30週の感染症発生動向調査情報では、報告数に大きな変動はありません。

さて、夏休みも始まり、暑い日々が続いています。クーラーの効いた部屋で過ごすことも多いのではないでしょうか。今週はレジオネラ症についてお話しします。

レジオネラ症が初めて報告されたのは1976年の夏でした。米国のホテルで開催された在郷軍人の集会で、約4400人の参加者のうち184名が原因不明の肺炎を発症し、そのうち29名が死亡しました。原因調査によってこの肺炎はそれまで報告のなかったレジオネラ属菌による肺炎であることが明らかになり、在郷軍人病と名付けられました。

レジオネラ属菌は自然界の土壌中や淡水に広く生息している細菌ですが、エアロゾルを発生させる人工環境(噴水等の水景施設、ビル屋上に立つ冷却塔、ジャクジー、加湿器等)にも生息します。感染はこの菌を含む水滴や空気等を吸いこむことによって起こりますが、特に空調システムや給湯システムが本菌に汚染されての感染例の報告が多くみられます。

症状としては、2〜10日の潜伏期の後、始めは疲労感や頭痛、筋肉痛などがみられますが、その後悪寒を伴った高熱がでます。また、精神症状が出現するのが特徴とされています。治療には特定の抗生物質が有効ですが、経過が早いので早期に治療を行うことが必要です。

レジオネラ症の中でもレジオネラ肺炎は、感染しても発病率は1〜6%と低いのですが、幼児や高齢者、あるいは入院患者などの免疫力が低下している人は、発症する危険性が高く、また重症化しやすいので注意が必要です。

日本でもビルでの集団発生や、温泉や循環式温水および病院の給湯システム汚染からの感染が報告されています。レジオネラ症の防止のため、ビルや病院の冷却塔、加湿器、給湯設備、循環式浴槽などレジオネラ属菌の感染源となる水利用施設の定期的な清掃や消毒が必要です。