福岡県感染症発生動向調査情報

第39週分(平成14年9月23日〜9月29日)

A群溶血レンサ球菌咽頭炎

今週第39週の感染症発生動向調査情報では、全般的に感染症の報告が少ないシーズンで、報告数が減少した疾患が多くみられています。

さて、今週は例年秋〜冬にかけて発生が増加するA群溶血レンサ球菌咽頭炎についてお話しします。

A群溶血レンサ球菌の感染によって起こる病気には、咽頭炎、中耳炎、産褥熱などの炎症や、しょう紅熱 、丹毒、リウマチ熱などがあります。また、1990年代に入って敗血症性ショックを起こす劇症型A群溶血レンサ球菌感染症が報告されるようになり、「ヒト喰いバクテリア」として英国の新聞などでも取り上げられました。

A群溶血レンサ球菌咽頭炎は、菌に感染してから1〜3日後に発病します。症状としては、のどに炎症が起こって赤くなり、それに強い痛みを伴うことが多く、そのために物を飲み込みづらくなります。また発熱(38.5℃以上)があり、さらに吐き気や腹痛を伴う場合があります。のどに化膿が起こらなければ、3〜4日で熱も下がり1週間程度でなおる病気です。

治療としては、ペニシリンなどの抗生物質がよく効きます。しかし、A群溶血レンサ球菌咽頭炎が治った後1〜2週間して、腎臓の糸球体腎炎やリウマチ熱などの合併症が起こることがあるので注意が必要です。そのため症状がおさまっても、少し長めに薬を服用する必要がありますので、自己判断で中断したりせず、医師の指示に従いましょう。

感染経路は、患者ののどの分泌物からの飛まつ感染ですが、ときに食品(ミルク、たまご、サラダ、弁当など)によって経口感染し集団発生が起こることがあります。
潜伏期は1〜3日で、この時期を含めて2〜3週間ぐらいは感染力がありますのでヒトとの接触を避けることが必要です。しかし、適切な抗生物質の治療が行われれば1〜2日以内に感染力は低くなるといわれています。

また、劇症型A群溶血レンサ球菌感染症は全国で毎年40例前後が確認されています。症状としては、咽頭炎がみられ熱がいったん下がりかけた時期に、再び38℃以上の発熱と手足や腰の筋肉痛、下痢や嘔吐などが見られます。この病気は極めて急激に進行し、軟部組織壊死や敗血症性ショックなどを起こします。死亡率は30%以上と極めて高いので、これらの症状がみられたら早急に医療機関を受診しましょう。