福岡県感染症発生動向調査情報

第41週分(平成14年10月7日〜10月13日)

Q熱について

今週第41週の感染症発生動向調査情報では、前週増加した疾患の報告数は大部分が減少していますが、感染性胃腸炎の報告数は2週連続で増加しています。

最近は一日の気温差が大きく、体調を崩しやすい季節です。体には気をつけて下さい。さて、今週はQ熱についてお話しします。

動物からヒトに感染する病気を人畜共通感染症と呼んでいますが、Q熱はその一つで、もともとは原因不明の高熱が続く病気、「Query Fever(解らない熱性疾患)」から名前がつけられました。Q熱はリケッチアの一種のコクシエラ・バーネッティイという病原体によって起こる感染症で、ヨーロッパからアジア、中近東、アフリカ、南北アメリカ大陸、オーストラリアなど世界中の広い地域で発生しています。わが国でも、平成13年には全国で40人、福岡県で1人の患者の届出がありました。

この病原体はマダニ類や鳥類、獣類、ヒトなど、多種の動物生体内で増殖します。病原体は感染している動物の乳、尿、糞便に排泄され、また感染動物が流・死産などを起こした場合は、胎盤などとともに大量に排出され、周囲を汚染します。

ヒトへの感染は、主に埃(ほこり)の中の病原体を吸い込むことによって起こります。稀に病原体に汚染された肉・生乳の経口摂取によって感染することもありますが、ヒトからヒトへ感染することはほとんどおこらないといわれています。

Q熱には急性型と慢性型があります。急性型の場合は、感染から2〜4週間の潜伏期の後に急に発熱し、頭痛や筋肉痛、咳、全身倦怠感、食欲不振などを伴い、40℃前後の高熱が1〜2週間程度続きます。治療にはテトラサイクリン系抗生物質が有効で、予後は比較的良好ですが、慢性化予防のためにも2〜3週間は薬を服用する必要があります。慢性型の場合には、心疾患や肝疾患、動脈炎などを発症し、死に至ることもあります。

動物に接することが多い人や、海外の牧畜の盛んな地域へ旅行した人で原因不明の高熱が続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

海外では家畜の出産シーズンに感染が発生することが多く、出産時の動物(ペットを含む)、特に死・流産などをおこした動物の取り扱いには特に注意しましょう。

ペットと一緒に暮らしていくためには、ペットの清潔に気をつけ糞の始末をこまめにする、ペットと遊んだり糞の始末をしたあとは十分な手洗いをする、口移しで食べ物を与えたりしないなどをを心がけることが必要です。