福岡県感染症発生動向調査情報

第12週分(平成15年3月18日〜3月23日)

結核

今週第12週の感染症発生動向調査情報では、インフルエンザの報告数は減少しています。一定点医療機関あたりの報告数は12.8(前週17.2)、地区別では、北九州が14.8(前週19.0)、福岡が13.2(前週18.4)、筑豊が10.9(前週11.5)、筑後が10.4(前週15.4)となっています。まだ、インフルエンザ流行発生警報は継続中です。引き続き、手洗いやうがいといった基本的予防法を続けましょう。

今回は、結核についてお話します。

結核は結核菌という細菌によって、ヒトからヒトにうつる病気で、患者の咳などによって出された分泌物を吸い込むことによって感染します。

しかし、結核は感染してもほとんどの場合は発病しません。これは体の免疫機構が働いて、結核菌を封じ込めてしまうからです。発病する場合は、すぐには病気として現れません。感染後2ヶ月頃から発病し始め、ほとんどが半年から2年の間に発病し、その後の発生は少なくなります。しかし、感染後、10年以上経ってからの発病も少数ですが見られます。

2001年に全国で結核に新たにかかった人は35,489人で、約2,488人の方が結核で死亡しています。福岡県では、2001年には、1,553人の新規患者が発生しており、結核の罹患率(人口10万人あたりの新規患者数)は全国平均を上回っています。なお、新規患者のうち60歳以上の方が全体の約6割を占めていて、今後高齢化によって発病者に対する高齢者の割合がさらに増加すると考えられています。

高齢者の全体に占める結核の罹患の割合が増加する一方で、これまで行われてきた結核対策に、来年度から大きな変化があります。それは小学校、中学校において、これまで行われてきたツベルクリン反応検査を用いた定期健康診断が廃止されることです。これは現在の若年者の結核の罹患状況などから考えれば、ツベルクリン反応検査と検査陰性者に実施されるBCGの再接種については、マイナス面(接種に伴う苦痛や再接種による副反応、過剰な精密検査など)が目立つ手法となっているためです。

よって今後は、それらに代わり@児童生徒への感染防止A感染者及び発病者の早期発見・早期治療B患者発生時の対応の3方向からの対策を充実・強化することで多面的な対策へ転換することとなりました。そのためにも感染防止対策として、生後3ヶ月以降から4歳まで(生後3ヶ月以降できる限り早期に接種することが奨められている)に達するまでに1回行うBCG接種が、これまで以上に重要になると考えられます。とくに乳児が結核に感染した場合は、結核性髄膜炎や粟粒結核など深刻な症状を呈することがありますので、予防のため、できるだけ早めにBCG接種を受けることをおすすめします。