福岡県感染症発生動向調査情報

第16週分(平成15年4月14日〜4月20日)

梅毒

今年第16週の感染症発生動向調査情報では、インフルエンザの報告数は減少を続けています。手足口病の報告数が前週から急に増加し、A群溶血レンサ球菌咽頭炎、伝染性紅斑の報告数も増加しています。

さて、今月は4回シリーズで性感染症についてお話ししているところですが、今週はそのシリーズの最後で梅毒についてお話します。

梅毒は、梅毒トレポネーマに感染して起こる病気ですが、ひとことで「梅毒」といっても、感染の時期や感染してからの期間、症状によっていろいろな名前で呼ばれます。

梅毒は、胎児が子宮内で感染する先天梅毒と、後天梅毒に分けられ、さらに後天梅毒は感染してからの期間、症状によって第1期から第4期まで分けられます。

第1期(感染してから10〜90日後)には、感染部位に硬性下疳(こうせいげかん、皮膚や粘膜がすこし盛り上がって表面にびらんを伴った湿疹ができる)が見られたり、リンパ節が腫れることがあります。これは放置していても4〜6週間で自然に消失しますが、放置せずに早期に医療機関で治療を受けることが大切です。第2期(感染後平均3か月から約3年までの期間)に入ると、全身にバラ疹と呼ばれる桃色の発疹が見られ、同時にリンパ節が腫れたり、発熱や関節痛が見られることがあります。第3期(感染後3年以上経過した時期)に入ると皮膚などにゴム腫と呼ばれる固いしこりやこぶができます。第4期の梅毒では、血管障害、心臓障害などが出現したり、神経や脳が侵され後遺症を残すことがあります。

感染経路としては、硬性下疳のような梅毒の病変のある部分に皮膚や粘膜が接触したり、体液を介して感染しますが、性行為以外にも、先天梅毒のように胎盤を介しての感染や、医療従事者が手指から感染したという報告があります。 

治療はペニシリンなどの抗生物質の投与が極めて有効ですが、症状が治っても病原体が体の中に潜んでいることもあるので、根気よく治療する必要があります。

予防としては他の性感染症と同じで、複数の性パートナーを持たない、コンドームを正しく使用することが大切です。または、先天性梅毒の予防のために、妊娠前の性病検査や、妊娠初期に梅毒の血清検査を受け、必要時は適切な治療を受けましょう。

最後に梅毒に感染している人はHIVに感染しやすいと同時にHIV感染者には梅毒が多く認められるので、梅毒に感染している人はHIVの検査を行うことが望ましいとされています。

なお、保健所では性感染症の相談やHIV(エイズ)の検査が無料で受けられます。(一部の保健所では今回取り上げた梅毒やクラミジアの検査もしています)。県内のどこの保健所でも相談や検査が受けられますが、保健所によっては曜日や時間帯が違うので、事前に電話で確認(予約が必要な場合がある)をしていくことをお勧めします。