福岡県感染症発生動向調査情報

第24週分(平成15年6月9日〜6月15日)

ハンセン病

今年第24週の感染症発生動向調査情報では、全体的に変動が少なくなっています。毎週増加していた手足口病の報告数はやや減少しています。

さて、6月22日から28日までは「ハンセン病を正しく理解する週間」です。そこで今週は、ハンセン病についてお話しします。

ハンセン病は、結核と同じ抗酸菌の仲間である「らい菌」という病原体によって起こる感染症で、以前は「らい病」と呼ばれていました。

潜伏期間は数週間から数十年(平均3〜5年)と比較的長く、症状としては、全身(特に顔面)の皮膚に、少し赤みを帯びて盛り上がったかたまりのようなものが多数できたり、ただれたようになったりします。また、(末梢)神経の障害も起こり、痛みや冷たさなどの感覚が鈍くなることがあります。

治療はいくつかの薬剤を併用する多剤併用療法を基本として行われています。早期に発見し、正しく治療をすれば、障害を残すことなく治癒できます。治療を開始して数日で感染性がなくなってしまうため、治療は現在はほとんど外来で行われています。

最近の日本での年間患者発生数は10名以下で、過去に感染し、加齢や癌などで免疫力が低下したために発病したと考えられています。

また、現在療養所に入所されている方は患者・元患者の方々であり、療養所の医師や看護婦などでハンセン病にかかった職員はひとりもおりません。回復した患者(外見上は後遺症はありますが)から、感染する可能性はまったくありません。

ハンセン病の患者の方々は、その症状や後遺症による身体の変形などによって、長い間差別と偏見にさらされてきました。ハンセン病の患者には、平成8年に「らい予防法」が廃止されるまで、社会から隔離される政策が取られてきました。親や兄弟姉妹と一緒に暮らすことができない、実名を名乗ることができない、結婚しても子どもを生むことが許されない、一生療養所から出て暮らすことが出来ない、死んでも故郷の墓に埋葬してもらえない、こうした生活をハンセン病の患者の方々は長い間、強いられてきました。

ハンセン病について正しく理解し、患者・元患者のみなさんに対する偏見や差別をなくしましょう。