福岡県感染症発生動向調査情報

第25週分(平成15年6月16日〜6月22日)

腸炎ビブリオ食中毒

今週第25週の感染症発生動向調査では、ヘルパンギーナと手足口病の報告数が各地区で増加しています。また、感染性胃腸炎の報告数も増加しています。

さて、梅雨に入ってじめじめした蒸し暑い気候が続いています。これから食中毒が多発する季節です。そこで今週は、食中毒の原因の約3割を占める腸炎ビブリオによる食中毒についてお話しします。

腸炎ビブリオは細菌の一種で、海水中に生息し夏季海水温の上昇と共に活発に増えます。特に沿岸域に多く生息しているため、夏季に近海で捕れる魚介類の体表、内臓や、えらには多数の腸炎ビブリオが付着しています。日本では魚介類を刺身で食べる習慣があるため、腸炎ビブリオによる食中毒が夏に多く起こります。

症状は、10〜20時間の潜伏期間の後、激しい腹痛、嘔吐、水様性の下痢、発熱などがでます。患者の便の検査や原因となった食品の検査で腸炎ビブリオが検出されることで診断されます。ほとんどが数日〜1週間以内に症状はおさまります。下痢や発熱で脱水をおこすため十分な水分や電解質の補給が必要です。

腸炎ビブリオは他の細菌の2倍以上の速さで増殖しますが、真水や酸に弱く、60度10分間の加熱で容易に死滅します。ですから、真水でよく洗ったり、熱を加えた調理で食中毒を防ぐことができます。鮮魚類を取り扱うときには、以下のことに注意しましょう。

(1)魚介類は調理、または食べる直前まで冷蔵庫で保存する。
(2)魚介類は、調理前に真水でよく洗う。
(3)魚介類を取り扱った手やまな板、包丁はよく洗い二次汚染を防ぐ。
(4)調理後できるだけ速やかに食べる。

食中毒が発生する場所としては、飲食店の次に多いのが家庭での発生です。食中毒の予防のためには、食品の取り扱いにおいて、食中毒の菌を「つけない・増やさない・殺す」という3つの原則をきちんと守ることが重要になります。