福岡県感染症発生動向調査情報

第26週分(平成15年6月23日〜6月29日)

腸管出血性大腸菌感染症

今週第26週の感染症発生動向調査では、ヘルパンギーナと手足口病の報告数が増加しています。

今週は、腸管出血性大腸菌感染症についてお話しします。

ヒトの腸内には、病原性のない(非病原性)大腸菌が常在しています。これ以外で下痢などの症状を起こす病原性のある大腸菌は、腸管病原性(下痢原性)大腸菌と呼ばれ、腸管出血性大腸菌もその一つです。腸管出血性大腸菌には、O157のほかに、O26、O111などのいろいろな種類があります。
腸管出血性大腸菌感染症は、1982年に米国で集団発生が報告されたのが最初ですが、日本では1996年(平成8年)7月に大阪府堺市における大規模な集団発生が起こり、社会的な問題となりました。

発生時期は6〜10月が多く、一般に乳幼児や小児、高齢者が重症化しやすいといわれています。

潜伏期は平均3〜5日程度で、軽度の発熱や体のだるさに続いて下痢、腹痛が見られます。初めは水様性の下痢(1日10〜20回)で、しだいに強い腹痛と血便が出るようになります。注意が必要なのは腎臓の障害などをきたす溶血性尿毒症症候群(HUS)とよばれる合併症です。下痢が始まってから5〜7日ごろに約10%の方にみられ、けいれんなどの脳症を伴い重症化する事があります。初期症状には顔色不良、尿量減少、浮腫、意識障害といったものがありますので、このような症状が見られたら早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。

予防のポイントは食品の衛生的取扱いです。特に生肉などを取り扱う時には、注意が必要です。手洗いを十分に行い、生肉などを切った包丁やまな板は、洗ってから熱湯をかけたのち使う事が大切です。また、生の肉の汁などが、果物やサラダなど生で食べる物や調理の済んだ食品にかからないようにしましょう。また、食品の取り扱いに注意すると同時に、調理前、食前、排便後(おむつ交換後も)は十分な手洗いを行いましょう。