福岡県感染症発生動向調査情報

第34週分(平成15年8月18日〜8月24日)

腸管出血性大腸菌感染症

今年第34週の感染症発生動向調査情報では、お盆休みの減少後の翌週で、増減の判断が困難ですが、咽頭結膜熱、手足口病の報告数は更に減少しています。感染性胃腸炎ではカンピロバクターが多くみられていますが、腸管出血性大腸菌も急増しています。また、保育園等での腸管出血性大腸菌感染症の集団感染も発生しています。そこで、今週は腸管出血性大腸菌感染症についてお話しします。

ヒトの腸内には、病原性のない(非病原性)大腸菌が常在しています。これ以外で下痢などの症状を起こす病原性のある大腸菌は、腸管病原性(下痢原性)大腸菌と呼ばれ、腸管出血性大腸菌感染症もその一つです。腸管出血性大腸菌感染症には、最も報告の多いO157のほかに、O17、O26、O111などのいろいろな種類があります。

発生時期は6〜10月が多く、一般に乳幼児や小児、高齢者が重症化しやすいといわれています。2002年に全国で報告された菌陽性者10人以上の集団発生は、17件ありましたが、保育所・幼稚園での発生が10件と多く、うち3事例では簡易プールでの感染が疑われました。保育所等の集団発生では施設内感染に留まらず、家族への2次感染が報告される事例が多いのが特徴です。

ヒトへの感染経路は飲食物等を介した経口感染で、牛肉などの食肉、食肉から二次的に汚染された食品、牛の糞などで汚染された飲料水、患者の便で汚染されたものを口にした場合です。潜伏期は平均3〜5日程度で、軽度の発熱や体のだるさに続いて下痢、腹痛が見られます。初めは水様性の下痢(1日10〜20回)で、しだいに強い腹痛と血便が出るようになります。注意が必要なのは腎臓の障害などをきたす溶血性尿毒症症候群(HUS)とよばれる合併症です。下痢が始まってから5〜7日ごろに約10%の方にみられ、けいれんなどの脳症を伴い重症化する事があります。初期症状には顔色不良、尿量減少、浮腫、意識障害といったものがありますので、このような症状が見られたら早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。

予防のポイントは食品の衛生的取扱いです。特に生肉などを取り扱う時には、注意が必要です。手洗いを十分に行い、生肉などを切った包丁やまな板は、洗ってから熱湯をかけたのち使う事が大切です。また、生の肉の汁などが、果物やサラダなど生で食べる物や調理の済んだ食品にかからないようにしましょう。食品の取り扱いに注意すると同時に、調理前、食前、排便後(おむつ交換後も)は十分な手洗いを行いましょう。

また、保育所等でのヒトからヒトへの感染による集団感染予防には、普段からの職員の手洗い(特におむつ交換後)、園児への排便後・食事前の手洗いの指導を徹底するとともに、夏季はプールの衛生管理にも注意しましょう。