福岡県感染症発生動向調査情報

第38週分(平成15年9月15日〜9月21日)

カンピロバクター感染症

今年第38週の感染症発生動向調査情報では、多くの疾患の報告数が減少しています。

さて、今週はカンピロバクターによる感染症についてお話しします。

カンピロバクターは食中毒事例数において、サルモネラ、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌に次ぐ発生頻度を示す、重要な食中毒原因菌です。特に少児の下痢症患者からのカンピロバクターの検出率は約15〜25%で、下痢症の原因菌の第1位を占めています。成人でも下痢症患者の約5〜10%前後で、本菌がみつかります。

細菌が原因の食中毒は一般的に夏季(7〜9月)に多いのですが、カンピロバクターによる食中毒が多いのは5〜6月と10月前後であり、行楽シーズンと重なります。暑さも和らいできましたが、これからの季節も注意が必要です。

症状は、下痢、腹痛、発熱、吐き気、嘔吐など他の食中毒と同様ですが、潜伏期が2〜5日とやや長いのが特徴です。小児では受診当初はかぜと診断されることもあるようです。治療は、下痢が続くことによって起こる脱水に対する水分補給や、食事制限などが主ですが、症状が重い場合や、小児や高齢者、糖尿病患者など免疫力が低下している場合などは抗菌薬が使われることがあります。通常は1週間以内に回復します。まれにおこる合併症として、この病気にかかったあと数週間して、手足が麻痺するギランバレー症候群(急性熱性多発性神経炎)という病気があります。

この細菌は、ウシ、ブタ、トリなどの家畜やイヌ、ネコなどのペットの腸管の中にいることがあり、特にニワトリに多く保菌率は50%を越えるとされています。カンピロバクター感染症で、原因が判明したものの約8割が鶏肉関連の食品が原因であったとされています。肉類は中まで十分に火を通し、食べましょう。また、生の肉を調理したまな板や包丁、手から他の食材に菌がつき、食中毒を起こすこともあります。バーベキューなどを楽しむ時、それから家庭での調理においても肉や調理器具の取扱いには十分注意してください。また、小児はペットなど動物を触った後の手洗いを習慣づけるようにしましょう。