福岡県感染症発生動向調査情報

第19週分(平成16年5月3日〜5月9日)

E型肝炎
野生動物の生食にご注意を!

今週第19週の感染症発生動向調査情報は、連休の影響でしょうか、多くの疾患が減少しています。その中で、性感染症の性器クラミジア感染症、淋菌感染症が増加しています。また福岡地区を中心に風しん、麻しん(はしか)の発生があります。

動物由来感染症シリーズとして、今週は、E型肝炎についてお話しします。

E型肝炎は、E型肝炎ウイルスの感染によって引き起こされる急性肝炎です。インド、中央および東南アジア、中国、北アフリカ、メキシコなどで集団発生が報告されています。日本においては、これまで海外への旅行者の感染が多かったことから輸入感染症と言われていましたが、近年は、国内でのイノシシやシカといった野生動物を生で、また充分に焼かないで食べたことが原因と疑われる感染が報告されています。

調査によるとこれらイノシシ、シカをはじめ多くの動物でE型肝炎ウイルスの感染が疑われ、 その中の幾つかの動物の便、血液、肝臓などからウイルスが検出されています。人は、それらE型肝炎ウイルスに感染した動物の糞便で汚染された飲食物やそれら動物の肉などの生食で感染します。

E型肝炎ウイルスに感染した後、平均6週間の潜伏期を経て、発熱、悪心、腹痛等の腹部症状が現れ、検査で黄疸など肝機能の悪化が認められます。ただし、感染しても、すべてのヒトに症状がでるとは限らないようです。多くの人は、入院安静等により1ヶ月程で治りますが、中には重症化することがあります。特に、妊婦が感染した場合は、死に至る割合が、一般の1〜2%に比べ、20%に達するとの報告もあり、注意が必要です。治療法は、対症療法が中心となります。予防のためのワクチンも現時点ではありません。

E型肝炎の感染予防のため次のことに気をつけましょう。

1. E型肝炎の流行地に旅行する場合は、手洗いを十分に行い、清潔の保証がない飲料水、加熱していない貝類、自分自身で皮をむかない非調理の果物、野菜をとらないよう注意しましょう。
2.野生動物の肉などの生食は控えましょう。焼いたつもりでも、十分火が通ってないことがあります。また、特に妊婦は、重症化しやすいので気をつけましょう。