福岡県感染症発生動向調査情報

第21週分(平成16年5月17日〜5月23日)

動物由来感染症 その6  エキノコックス症

今週第21週の感染症発生動向調査情報では、手足口病、ヘルパンギーナ、流行性耳下腺炎などが増加しています。また風しんの報告が、続いています。

今週は、動物由来感染症シリーズとして、エキノコックス症についてお話しします。

エキノコックス症は、成虫の体長が5mm前後であるエキノコックスという寄生虫が肝臓などに寄生しておこる病気です。日本では、主に北海道で患者の発生が見られています。北海道のキタキツネや放し飼いをして感染した犬が主な感染源で、糞(ふん)の中に病原体であるエキノコックスの虫卵を排出します。

人は、そのエキノコックスの虫卵が、手指、食物、水などを介して口から入ることで、感染します。虫卵は、腸の中で幼虫になり、その後肝臓に寄生します。感染後、数年から数十年ほどたって自覚症状が現れます。初期症状は、上腹部の不快感、膨満感で、さらに病気が進行すると肝機能障害を起こし、発熱や黄疸などがみられます。

治療については、治療薬などの研究が進められており、現在のところは薬で寄生虫の成長を妨げることはできますが、最も有効な治療法は、手術で病巣(幼虫)を除去することです。早期診断された時の治療経過は比較的良好ですが、進行すると病巣の完全除去が困難なことがあります。

エキノコックス症の予防のために次のことに注意しましょう。
1.北海道に犬を連れて旅行される方は、犬がエキノコックスに感染した野ネズミを食べて感染することがあるため、飼い犬の放し飼いをしないようにしましょう。
2.キタキツネなどとの接触をできるだけ避け、外出後は手をよく洗いましょう。
3.沢や川の生水は煮沸してから飲むようにしましょう。
4.山菜や野菜、果物などもよく洗ってから食べましょう。