福岡県感染症発生動向調査情報

第29週分(平成16年7月12日〜7月18日)

日本脳炎

今週第29週の感染症発生動向調査情報では、多くの疾患の報告が減少しているなか、手足口病の報告が増加しています。また、O157等の腸管出血性大腸菌感染症の報告も続いています。

暑い日が続き、屋外で蚊に刺されることも多くなってきました。今週は、その蚊に関係する日本脳炎についてお話します。

日本脳炎は、極東から東南アジア、南アジアにかけて広く分布しています。また近年では、パプアニューギニアやオーストラリアの一部でも発生が報告され、アジア以外の地域へも広がってきました。日本では、ワクチンの定期接種によりすでに流行が阻止されており、毎年の報告は、10人以下となっています。またそのほとんどが高齢者です。しかし、近年、10代から40代と比較的若年の患者が報告されており注目されています。

日本脳炎は、日本脳炎ウイルスによっておこるウイルス感染症であり、人は、このウイルスを持っている蚊、主にコガタアカイエカに刺されることにより、感染します。西日本に多く、蚊の発生時期である夏から秋にかけて多く報告されています。
なお、人から人への感染はありません。また、患者を刺した蚊に刺されても感染することはありません。

潜伏期は、5〜15日で、数日間の高い発熱、頭痛、嘔吐、めまいで発病し、重症例では、意識障害、けいれん、昏睡がみられます。しかし、感染しても日本脳炎を発病するのは、100から1000人に1人程度で、大多数は無症状で終わります。ただし、発病すると死亡率は、20〜40%で、幼少児や高齢者では死亡の危険は高くなります。また小児では、重度の障害を残すことが多いとされています。

特別な治療法はなく、対症療法が中心となります。そのため、予防が重要となります。日本脳炎には有効なワクチンがあります。また、蚊は、バケツ、古タイヤなど、ちょっとした水溜りにも卵を産むので、蚊の発生を減らすために、これらの水を空にするよう心がけましょう。さらに、蚊に刺されないようにするには、次のことに注意しましょう。
・夕方から夜明けまでの蚊の活動期には、屋外で過ごすことをなるべく避ける
・戸外へでるときは、できる限り長袖、長ズボンを身につける
・露出している皮膚には、蚊除け剤を使用する