福岡県感染症発生動向調査情報

第30週分(平成16年7月19日〜7月25日)

細菌性赤痢

今週第30週の感染症発生動向調査情報では、流行性角結膜炎、性器クラミジア感染症、淋菌感染症が増加しています。O157等の腸管出血性大腸菌感染症の報告も続いています。

さて、今週30週は、海外からの帰国者で細菌性赤痢の発生報告がありましたので、その細菌性赤痢についてお話しします。

日本における赤痢患者数は、戦後しばらくは、年間10万人を超え、そのうち2万人近くも亡くなっていましたが、1965年頃から激減し、最近では、年間1000人前後で推移しています。福岡県においては、この数年20人から50人程度の発生が報告されています。主に、インド、インドネシア、中国、タイなどのアジア地域からの帰国者に、多く発生しています。しかし、ここ数年、国内の保育園、ホテル、施設などにおける集団感染や、生カキの喫食が原因とみられる全国規模での集団発生等が報告されています。

細菌性赤痢の主な感染源は、人であり、患者や保菌者の便、それらに汚染された手指、食品、水、ハエ、トイレのドアノブ、タオルなどを介して、経口感染します。人以外で、サルも細菌性赤痢にかかり、輸入したサルから人に感染した報告例もあります。 赤痢菌は、10個から100個と少ない菌量で感染が成立し、そのため家族への2次感染が多くみられます。

1〜5日(通常3日以内)の潜伏期間の後、全身の倦怠感、悪寒を伴う急激な発熱、水様性下痢などで発症します。発熱は、1〜2日続き、腹痛、しぶり腹(トイレにいった後でもすっきりせず、またトイレに行きたくなる状態)、膿粘血便などの症状もみられることがあります。近年では、重症例は少なく、数回の下痢や軽度の発熱で経過する事例が多いようです。通常1週間程度で回復し、予後は良好で、死亡することは、まれです。ただし、乳幼児や高齢者は重篤化しやすいので注意が必要です。

治療は、下痢や発熱が激しければ、輸液など症状に見合った治療を行いますが、抗生物質が奏効します。ただし、近年、一部の抗生剤で、以前効いていたものが効かなくなるなどの、耐性菌が検出されており、今後増加することが危惧されています。

赤痢は世界中どこでもみられる感染症で、特に衛生状態の悪い国に多くみられます。予防には、手洗いの励行が基本です。帰国者からの発病が多くを占めることから、汚染地域と考えられる国では、生もの、生水、氷などは飲食しないよう心がけましょう。