福岡県感染症発生動向調査情報

第36週分(平成16年8月30日〜9月5日)

マラリア

第36週の感染症発生動向調査情報では、O157等の腸管出血性大腸菌感染症の報告が続いています。また、カンピロバクターやサルモネラなど食中毒の原因となる菌による感染症も引き続き報告されています。また海外からの帰国者で、マラリアが報告されています。

そこで、今週は、マラリアについて、お話しします。

マラリアは、マラリア原虫によって起こる病気で、この原虫を持った蚊(熱帯〜亜熱帯に広く分布)に刺されることによって感染します。原虫の種類によって、熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリアの4つに分けられます。アジア・オセアニア(インドネシア、インド)では、三日熱マラリアが多く、アフリカ(ケニア、ガーナ、マリ)では熱帯熱マラリアが多くなっています。

世界では、熱帯から亜熱帯の100カ国で流行しており、年間で3〜5億人がこの病気にかかると推定され、150〜270万人が死亡していると報告されています。日本でも輸入感染症として、1970年代より増加がみられます。福岡県では、このところ、年間、1例から5例程度報告されています。

潜伏期は熱帯熱マラリアでは10日前後、四日熱マラリアで1か月前後、三日熱および卵形マラリアでは半年から1年に及ぶことがあります。

症状としては、急に悪寒(寒気)がして40度を越える高い熱が出ます。関節痛や結膜充血などインフルエンザとよく似た症状がみられます。三日熱マラリア、卵形マラリア、四日熱マラリアは、高熱が数時間続いたあと、大量の汗をかいて熱が下がる「熱発作」と呼ばれる状態をくり返します。これらのうち熱帯熱マラリアは、発病後数日以内に治療をしないと、ショックなど重篤な合併を引き起こし死亡することがあります。

よって、流行地域から帰国後に、突然の発熱をみた場合、マラリアを疑って早めに検査を受けることが大切です。

マラリアの予防のためには、蚊に刺されないようにすることが大切です。流行地では、蚊の活動時間である夕方から朝までの外出を避け、長袖・長ズボンを着用し、露出部位には刺されないための薬を塗りましょう。マラリアの予防薬は、感染を予防することはできませんが、発病を予防するために使われ、流行地に行く前1〜2週間と、帰国後4〜6週間内服します。