福岡県感染症発生動向調査情報

第37週分(平成16年9月6日〜9月12日)

結核(前編) 〜結核予防週間(9月24日〜30日)〜

第37週の感染症発生動向調査情報では、O157等の腸管出血性大腸菌感染症の報告が続いているほか、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の報告が増加しました。

さて、9月24日(金)から30日(木)は、「結核予防週間」です。

日本では、かつて多くの人の命が結核により奪い去られました。現在の結核事情は、医療や生活水準の向上により、大幅に改善を遂げてきましたが、それでも全国で、年間約3万人の新規結核患者が発生し、また約3千人が亡くなっています。福岡県で平成14年に新たに結核にかかった人は、約1400人で、全国平均よりも高くなっています。また結核で死亡した人も90人報告されています。

一方、世界では、HIV感染者の増加が、結核のまん延を加速させるといった問題もおきています。これは、HIV感染により免疫力が低下し、結核を発病しやすくなるためです。

そこで、今週は、次週との2回にかけて、結核についてお話しします。

結核は、結核菌によって、人から人へと感染する病気で、主に肺に炎症をおこします。結核菌は、重症の結核患者が、咳やくしゃみをした時に飛び散り、それを周りの人が直接吸い込むことによって感染します。通常は、身体の免疫機能が働いて、結核菌の増殖を抑えるため、結核に感染しても必ず発病するわけではなく、感染して発病するのは、およそ10人に1人程度です。

結核の発病のタイプは2通りあります。1つは、感染して3ヶ月頃から発病し始め、半年から2年の間にほとんどが発病するタイプで、乳幼児、思春期、青年期に多くみられます。受診や診断が遅れた結果、学校等で集団感染を起こすことがあります。

もう1つは、感染してから長い期間が経過して発病するタイプで、中年期、老年期に多くみられます。昭和20年代まで、結核は今よりずっと流行していました。その時代を過ごした世代の人は、結核に既に感染している人が多く、加齢や糖尿病、大きな手術等で体力・免疫力が低下した時に、眠っていた菌が目を覚まし、発病しやすくなります。
 
結核の初期症状は、咳、痰、発熱、だるさや寝汗など、かぜによく似ています。病気がすすむと血痰や胸の痛みなどの症状が出てきます。2週間以上続く咳や痰、長引く倦怠感や微熱、体重減少、胸痛があるときは、結核も疑って早めに医療機関を受診しましょう。

次週は、結核の検査、治療、予防についてお話しします。