福岡県感染症発生動向調査情報

第44週分(平成16年10月25日〜10月31日)

レジオネラ症

第44週の感染症発生動向調査情報では、筑豊、筑後地域でインフルエンザの報告が増えています。まだ流行には達していませんが、例年より早い増加です。その他に、RSウイルス、A群溶血性レンサ球菌、感染性胃腸炎、水痘などこれから発生が増える疾患の報告も増えています。
 
今週は、レジオネラ症についてお話しします。

レジオネラ症が初めて報告されたのは1976年の夏でした。米国のホテルで開催された在郷軍人の集会で、約4400人の参加者のうち184名が原因不明の肺炎を発症し、そのうち29名が死亡しました。原因調査によってこの肺炎はそれまで報告のなかったレジオネラ属菌による肺炎であることが明らかになり、在郷軍人病と名付けられました。

レジオネラ症は、レジオネラ属菌の感染によって起こる感染症です。レジオネラ属菌は土壌、河川、湖沼など自然環境中に生息する細菌です。一般に、そのような自然環境では、菌数は少ないのですが、レジオネラ属菌は、15℃〜43℃で繁殖し、循環式浴槽水、空調施設の冷却塔水、給湯器の水などの人工温水中に生息する原虫類(アメーバ)の細胞内で大量に増殖します。これらの水から発生したエアロゾルの吸入によって感染が起こります。感染した人から、人へ感染することはありません。

レジオネラ症は、2〜10日の潜伏期の後、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛などの症状に始まり、咳、高熱、胸痛が見られるようになります。また、早期に、昏睡や幻覚などの意識障害や歩行障害などが出現することもあります。病気の進行が早く、医療機関の受診が遅れた場合、有効な抗生剤による治療が間に合わないと、死亡する割合が6割〜7割になることもあります。死亡例は発病から7日以内が多いようです。特に高齢者や新生児、免疫機能が低下した方は、肺炎を起こす危険性が高く、また重症化しやすいので注意が必要です。

これまで、空調システム、給湯システム、家庭における循環式浴槽水が本菌に汚染されて感染した例が報告されている他、近年では、温泉施設を感染源とする集団感染も報告されています。

レジオネラ属菌は、土ぼこりなどとともに、冷却塔、循環式浴槽、加湿器などの人工環境水系へ混入しますが、混入を完全に避けることは困難なため、レジオネラ症の予防のためには、人工環境水設備の適切な換水や清掃、消毒が必要とされています。