福岡県感染症発生動向調査情報

第48週分(平成16年11月22日〜11月28日)

ノロウイルス感染症

第48週の感染症発生動向調査情報では、インフルエンザの報告は、まだ少数です。一方、感染性胃腸炎の報告が各地区で増えています。

そこで、今週は、感染性胃腸炎の原因ウイルスのひとつであるノロウイルスについてお話しします。

ノロウイルスは、これまで、電子顕微鏡でみた形態から、小型球形ウイルス(SRSV)と呼ばれたり、ノーウォーク様ウイルスという暫定的な属名で呼ばれたりしてきました。現在は、国際ウイルス命名委員会により、ノロウイルスと正式名称が決定されています。

ノロウイルス感染症は、世界中で報告されており、日本でも例年冬季に報告が増えてきます。近年、学校や入所施設内での集団感染が、しばしば報告されています。
主な症状は、吐き気、嘔吐、下痢で、腹痛、頭痛、発熱、のどの痛みなどを伴うこともあります。
ノロウイルスは、感染力が強く、少量でも感染します。感染経路は、ほとんどが経口感染で、次のような感染様式があります。
1 ウイルスに汚染された貝類を生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合
2 調理従事者や食品の製造に従事する人が感染しており、その人を介してウイルスに汚染された食品を食べた場合
3 患者の便や吐物から感染した場合

また、ウイルスは症状が消失した後も3〜7日間ほど患者の便中に排出されます。吐物や便に含まれたノロウイルスは、乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入って感染することもあると言われています。

潜伏期は、1〜2日で、乳児から成人まで幅広く感染しますが、一般に症状は軽症であり、治療を必要とせずに1〜2日で軽快します。まれに、重症化する例もあり、高齢者や免疫力の低下した乳児では死亡例も報告されています。また、感染しても症状がでない場合や軽いかぜのような症状もあります。

現在、このウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありません。このため通常、嘔吐や下痢などで脱水症状がひどい場合には、輸液を行うなどの対症療法が行われます。

対策として、食品の取り扱いに際しては入念な手洗いなど衛生管理を徹底すること、患者の吐物や便などウイルスを含む可能性のある汚染物を処理する際には、使い捨てのマスクと手袋を着用し、また汚物中のウイルスが飛び散らないようにペーパータオル等で静かにふき取りましょう。