福岡県感染症発生動向調査情報

第14週分(平成17年4月4日〜平成17年4月10日)

A型肝炎(ウイルス性肝炎 その1)

第14週の感染症発生動向調査情報では、インフルエンザの流行はほぼ終息しつつあります。伝染性紅斑(リンゴ病)と流行性耳下腺炎が、例年と比べやや報告が多い傾向にはありますが、この時期、特に報告が増加している疾患はありません。

さて、今週から数週にかけて、ウイルス性肝炎についてお話ししようと思います。まず、A型肝炎から始め、次週以降、B型、C型、E型と続ける予定です。

A型肝炎は、A型肝炎ウイルスを原因とする感染症です。冬から春、初夏にかけての発生が多くみられます。日本では、以前は多くの人が感染する病気でしたが、衛生環境の改善等により、約50年ほど前から発生が激減しました。したがって、現在50歳以上の方の多くは、過去にA型肝炎に感染した可能性が高く、その結果、A型肝炎に対する免疫を持っている方が多いのですが、40歳以下の多くの方は、A型肝炎に対する免疫を持っていません。これらの方々は、海外旅行での感染や、施設内での集団発生や家族内感染への注意が必要です。

A型肝炎は、A型肝炎ウイルスに汚染された生水や食品、特に加熱不十分な牡蠣を口にすることで感染します。また、感染者の便の中に排泄されたウイルスが含まれるため、これに汚染された手などを介して経口感染します。まれですが、血液を介する感染も起こります。

潜伏期は、平均約30日で、発熱、倦怠感が出現します。食欲不振、嘔吐などの消化器症状を伴い、黄疸、濃色尿、灰白色便などを認めることがあります。急性の肝炎で、慢性化せず、一般的には予後良好ですが、まれに劇症肝炎が起きます。小児期に感染しても症状が現れないことが多く、逆に成人になって感染すると、症状が現れ、またその程度も強いようです。

予防としては流行期や肝炎が発生している地域での生水、生ものの摂取を控えることです。また、家族や施設内など患者が発生した場合、食事前などの手洗いを励行しましょう。

途上国などではA型肝炎がなお広く見られる地域があります。このような地域へ旅行する場合は、生水や、生ものを口にしないようにしましょう。また、A型肝炎には予防接種があります。A型肝炎が流行している地域へ旅行する際には、事前に予防接種を受けることをお勧めします。