福岡県感染症発生動向調査情報

第19週分(平成17年5月9日〜平成17年5月15日)

コレラ

今週はコレラについてお話しします。

コレラは、コレラ菌という細菌が出すコレラ毒素によっておこる感染症です。アジア、アフリカ、南アメリカなど世界で広く流行しています。コレラ菌は、1960年頃まで流行していたコレラと現在流行しているものとは性質が多少異なり、かつてのコレラ菌は古典型と呼ばれ、病原性も強く、死亡率も高かったのですが、現在流行しているコレラ菌は、エルトール型と呼ばれ、病原性も比較的弱いと言われています。日本人の場合は、胃腸の弱い人、高齢者、乳幼児を除けば死亡することはほとんどないようです。

症状としては、通常1〜3日の潜伏期のあと、突然、水のような下痢と嘔吐が始まります。何回も繰り返すため水分と電解質が失われ、脱水を起こすことがあります。腹痛や発熱がないため、医療機関への受診が遅れる傾向がありますが、早めに治療することが大切です。一般的には、軽症な場合が多いのですが、子どもやお年寄り、また、過去に胃の切除を受けたり、慢性の胃の病気を持っている人は、重症になることがあるので、注意が必要です。治療としては、輸液と抗菌剤の使用などが行われます。

感染は、コレラ菌に汚染された水および食物を摂取することによりおこります。人から人への直接接触による感染の可能性は少ないようです。

日本では、フィリピン、インド、インドネシアなど海外で感染し、日本に帰国してから下痢などの症状で発病する例が多く見られます。また、輸入された魚介類などの汚染が原因であろうと推定される国内での感染例も少なからず報告されています。

コレラの流行地に旅行する場合は、生水、氷、生の魚介類の摂取は避けましょう。ジュースなどに入れてある氷や、氷の上に飾られたカットフルーツで感染した例も報告されています。

また、帰国時、下痢などの症状があった場合は検疫所で申告をし、すぐに医療機関を受診し、検査・治療を受けましょう。