福岡県感染症発生動向調査情報

第22週分(平成17年5月30日〜平成17年6月5日)

腸チフス

今週は、腸チフスについてお話しします。

腸チフスは、チフス菌による細菌感染症で、東南アジア、南アジア、アフリカ、中南米など世界各地で流行しています。日本では、年間60例ほど報告されており、多くは海外からの帰国者です。その推定感染地域は、インド、インドネシア、ネパール、バングラデシュ、フィリピンなどアジアが7割を占めています。

通常1〜3週間の潜伏期のあと、発熱で発症します。持続する39度以上の発熱以外、特別な症状がないことが多いのですが、バラ疹、脾臓の腫大、比較的除脈(高熱のわりには脈が速くならない)、便秘、下痢などがみられることがあります。重症例では、意識障害を引き起こします。その後、徐々に解熱しますが、この時期に腸出血、またそれに引き続き腸穿孔を起こすこともあります。

抗菌薬による治療が行われ、ニューキノロン系の抗菌剤が第1選択薬とされています。現在では、この抗菌薬による治療により、腸出血など重症例は少なく、死亡例もほとんどありません。しかし、近年、このニューキノロンが効きにくいチフス菌が増えており、動向が注視されています。

感染経路は、患者および保菌者の便または尿、それらによって汚染された食品、水、手指からの経口感染です。人から人への直接感染よりも、汚染された食品や水を介して感染したと考えられる例が多くなっています。流行地での感染の多くは水や生ものを介した感染です。特に、生水、氷、生の魚介類、フルーツ、生野菜、火が通っていない食べ物は避けましょう。