福岡県感染症発生動向調査情報

第26週分(平成17年6月27日〜平成17年7月3日)

細菌性赤痢

福岡県では、今年になってこれまで、細菌性赤痢が合わせて19件報告されています。いずれも海外からの帰国者で、帰国時または帰国後数日以内の発症でした。旅行先は、フィリピン、インドネシア、ベトナム、ネパール、インドなどアジア地域でした。

細菌性赤痢の主な感染源は、人であり、患者や保菌者の便、それらに汚染された手指、食品、水、ハエ、トイレのドアノブ、タオルなどを介して、経口感染します。人以外で、サルも細菌性赤痢にかかり、輸入したサルから人に感染した報告例もあります。

赤痢菌は、10個から100個と少ない菌量で感染が成立し、そのため家族への2次感染がみられることがあります。

1〜5日(通常3日以内)の潜伏期間の後、全身の倦怠感、悪寒を伴う急激な発熱、水様性下痢などで発症します。発熱は、1〜2日続き、腹痛、しぶり腹(トイレにいった後でもすっきりせず、またトイレに行きたくなる状態)、膿粘血便などの症状もみられることがあります。近年では、重症例は少なく、数回の下痢や軽度の発熱で経過する事例が多いようです。通常1週間程度で回復し、予後は良好で、死亡することは、まれです。ただし、乳幼児や高齢者は重篤化しやすいので注意が必要です。

治療は、下痢や発熱が激しければ、輸液など症状に見合った治療を行いますが、抗生物質が奏効します。ただし、近年、一部の抗生剤で、以前効いていたものが効かなくなるなどの、耐性菌が検出されており、今後増加することが危惧されています。

赤痢は世界中どこでもみられる感染症で、特に衛生状態の悪い国に多くみられます。予防には、手洗いの励行が基本です。また、旅行中、生もの、生水、氷などは飲食しないよう心がけましょう。