福岡県感染症発生動向調査情報

第31週分(平成17年8月1日〜平成17年8月7日)

悪性中皮腫と肺がん

今回は、感染症ではありませんが、このところ話題になっているアスベストの健康影響について、お話しします。

アスベストの繊維は、石綿(アスベスト)肺、悪性中皮腫の原因になるといわれ、肺がんを起こす可能性があることが知られています。

石綿(アスベスト)肺は、肺が線維化してしまう肺線維症(じん肺)という病気の一つです。肺の線維化を起こすものとしては石綿のほか、粉じん、薬品等多くの原因があげられますが、石綿のばく露によっておきた肺線維症を特に石綿肺とよんで区別しています。職業上アスベスト粉塵を10年以上吸入した労働者に起こるといわれており、潜伏期間は15〜20年といわれております。

悪性中皮腫は、肺を取り囲む胸膜、肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜、心臓及び大血管の起始部を覆う心膜等にできる悪性の腫瘍です。20年〜50年という長い潜伏期間の後、発病することが多いとされています。症状としては、腫瘍が小さい間は、無症状であることが多く、大きくなると、胸膜では、胸痛や息切れや咳などがあり、腹膜では、腹部腫瘤を自覚することがあります。また、胸水や腹水が見られることもあります。治療は、外科療法、抗がん剤治療、放射線療法などがありますが、現時点では、いずれも効果は限られています。

一方、肺がんについては、アスベストが肺がんを起こすメカニズムはまだ十分に解明されていません。アスベストを吸い込んでから肺がんを発症するまでに15〜40年の潜伏期間があります。肺がんは、アスベストの曝露と喫煙との組み合わせで、発症が相乗的に上昇すると言われており、その両方がない場合と比べて、肺がんを発症するリスクが、約50倍上昇するとの報告もあります。禁煙は、アスベストに関係する肺がんを予防する意味でも重要です。

アスベストを吸い込んだ量と中皮腫や肺がんなどの発病との間には相関関係が認められていますが、短期間での低濃度曝露における発がんの危険性については、不明な点が多いとされています。アスベストを吸い込んだ可能性のある方で呼吸困難や咳、胸痛などの症状がある方、その他特にご心配な方は、呼吸器の専門医に相談されることをお勧めします。詳しくは、最寄りの保健所等にご相談ください。