福岡県感染症発生動向調査情報

平成18年第14週分(平成18年4月3日から平成18年4月9日)

伝染性紅斑(リンゴ病)

福岡県において、昨年は、伝染性紅斑が流行した年になりました。伝染性紅斑は、過去には、平成8年、平成13年に流行が見られていますが、昨年は、それ以来の流行になりました。今年は、これまでのところ、昨年程ではありませんが、過去5年間と比べ、比較的多く報告されています。そこで、今週は、この伝染性紅斑についてお話しします。

伝染性紅斑は、両頬がリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」と呼ばれることもあります。ヒトパルボウイルスB19というウイルスによる感染症です。

感染経路としては、通常は、のどや鼻汁の分泌物などの飛沫または接触感染ですが、まれに輸血による感染も報告されています。

10から20日の潜伏期の後、頬に境界が鮮明な紅い発疹(蝶の羽状、リンゴの頬)が現れ、続いて腕や脚に網目状またはレース状の紅斑がみられます。これらの紅斑は、1週間程度で消失しますが、なかには長引いたり、一度消えた紅斑が、日光などの刺激により、再度現れたりすることがあります。発熱は、あっても軽度です。成人では、典型的な紅斑が見られないことがあり、逆に、関節痛、関節炎が、小児より多くみられますが、ほとんどは合併症をおこすことなく自然に回復します。

また、感染しても、症状が現れない不顕性感染もあり、これは成人に多くみられます。

このように一般的には予後が良好な疾患ですが、妊婦が感染すると流産や死産の原因となることがあり、また、免疫不全症の患者や遺伝性の溶血性貧血患者では、強度の貧血を起こすことがあります。よってこれらの方は、流行の時期には、人ごみを避け、また手洗いを励行しましょう。

なお、頬に紅斑が出現する7から10日くらい前に、微熱やかぜ様症状が見られることがありますが、この時期がウイルスの排泄量が最も多くなります。逆に、紅斑が現れたときには、ウイルスの排泄はほとんどなく、感染力はほぼ消失しています。したがって、紅斑のみで、全身状態が良い場合には、学校等へは登校できます。