福岡県感染症発生動向調査情報

平成18年第40週分(平成18年10月2日〜平成18年10月8日)

レジオネラ症

今週は、レジオネラ症についてお話しします。

レジオネラ症が初めて報告されたのは1976年の夏でした。米国のホテルで開催された在郷軍人の集会で、約4400人の参加者のうち184名が原因不明の肺炎を発症し、そのうち29名が死亡しました。原因調査によってこの肺炎はそれまで報告のなかったレジオネラ属菌による肺炎であることが明らかになり、在郷軍人病と名付けられました。2005年の集計によると全国で280名、福岡県では8名のレジオネラ症の発生が報告されています。

レジオネラ症は、レジオネラ属菌の感染によって起こる感染症です。レジオネラ属菌は土壌、河川、湖沼など自然環境中に生息する細菌です。一般に、そのような自然環境では、菌数は少ないのですが、レジオネラ属菌は、15℃から43℃で繁殖し、循環式浴槽水、空調施設の冷却塔水、給湯器の水などの人工温水中に生息する原虫類(アメーバ)の細胞内で大量に増殖します。これらの水から発生したエアロゾルの吸入によって感染が起こります。感染した人から、人へ感染することはありません。

レジオネラ症は、2日から10日の潜伏期の後、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛などの症状に始まり、咳、高熱、胸痛が見られるようになります。また、早期に、昏睡や幻覚などの意識障害や歩行障害などが出現することもあります。病気の進行が早く、医療機関の受診が遅れた場合、有効な抗生剤による治療が間に合わないと、死亡する割合が6割から7割になることもあります。死亡例は発病から7日以内が多いようです。特に高齢者や新生児、免疫機能が低下した方は、肺炎を起こす危険性が高く、また重症化しやすいので注意が必要です。

これまで、空調システム、給湯システム、家庭における循環式浴槽水が本菌に汚染されて感染した例が報告されている他、近年では、温泉施設を感染源とする集団感染も報告されています。
レジオネラ属菌は、土ぼこりなどとともに、冷却塔、循環式浴槽、加湿器などへ混入することがありますが、混入を完全に避けることは困難なため、レジオネラ症の予防のためには、それらの適切な換水や清掃、消毒が必要とされています。


その他、詳細情報は、福岡県感染症情報(http://www.fihes.pref.fukuoka.jp/~idsc_fukuoka/)として、情報提供していますので、ご活用ください。